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「僕らはずっと自分達しか大事じゃなかったからさ、お互いの依存度もちょっと並外れてるし、他人に対して結構閉鎖的だったりしちゃうんだよ。光なんか特にお子様だから感情だけでつっ走っちゃうの」

自覚はあったのか、と環は思った。それよりも竜胆は馨の言葉を聞いて驚く事無く笑みを浮かべていた。あんな小さかった弟はこんなにも成長していた事に涙を流しそうだ。

「それでも殿とかには通じてたからほっといたわけなんだけど」

自覚してんならちょっとは気をつかってよ、と皆呆れるが。

「光は自覚無いみたいだけどハルヒの事かなり気に入ってんだよ。でも自分の感情押しつけるやり方しか知らないから子供じみた独占欲になっちゃう。相手に認めてほしいって思っててもどうやったらわかんないんだ。…オモチャじゃなくてホントの友達になりたいなら、相手も尊重しなきゃダメじゃん?そーゆーちゃんとした“他人との付き合い方”ってのを、光はきっちり学ばなきゃいけないって思うわけ」

「馨…すごいなお前」

いつの間にそんなにエライ子に?おネツは?と環は思わず確認してしまう程だ。竜胆も環と同じ様に馨に手を伸ばし触るのは額ではなく頭だったが。

「まー僕も最近気付いたんだけどサ」

「つまり今日のデートは光に“相手を思いやる気持ち”を芽生えさせる試練なわけか?」

「そーゆーこと!だから、絶っっ対に邪魔しないでよね!したらブッ殺すよ?」

なんとも恐ろしい言葉だ。兄の為ならばここまで言ってのけちゃう馨は少しばかり自分と似ている様な気がして竜胆は苦笑い。邪魔しないでと言うならばこの尾行もやめれば良いものの、それは面白そうだから引かない。それもまた馨らしいが。環はちらりと空を見上げた。

「環?」

「どうかしたの?」

「イヤ…崩れなきゃいーなと思って」

「山の天気は崩れやすいって美鈴さんが言ってたけど…気になるの?」

「あー…まぁ」

環の言葉は歯切れ悪かった。それに鏡夜と竜胆は首を傾げた。

「竜胆、お前暑くないのか?」

「正直言うと暑い」

竜胆は苦笑いしながら皆の後ろを歩いた。その手に持つ日傘はくるくると機嫌が良さそうに回っていた。




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