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「あ、これウマイ」

「ちょーだい」

「光、それ何?」

「天ぷらそば。後乗せサクサクだって」

そう言いながら竜胆は光の持っているそばを奪った。おぉ、これはなかなか。庶民ラーメン大会をしながらハルヒが出てくるのを待った。

「あの…この制服…もらっていーんですか?」

男子生徒の制服を身に纏ったハルヒがカーテンから出てきた。やはり目に狂いはない。ハルヒはとても可愛らしかった。

「かわいい!なんて愛らしいんだ…まるで女の子のようじゃないか…!」

環は未だに気付いていないらしい。皆も気付いているのか分からないが、誰も環に本当の事を教えようとはしなかった。

「ハルちゃん、かわいー!」

「んな顔してんなら早く言ってよねー」

「これなら客もつくんじゃないか?」

「そう!すべて計算通り!さあ今こそ君の価値が問われる時が!」

なーにが計算通りだよ。私の言葉をスルーした癖に。さも自分が見つけたかのように。悪態吐きながら竜胆はそばをすすった。なかなか美味しいじゃない。日本の庶民ラーメンの技術は流石、とでも言っておこうか。

「どうした、竜胆」

「別にどうもしてないわよ。鏡夜、これ案外美味しい。食べる?」

「いらない」

だよね、鏡夜が庶民ラーメンを持っている姿が想像出来ない。いや、想像したら面白そう。鏡夜はそんな竜胆を見て手の甲で彼女の頭を軽く叩いた。そして竜胆はすっかりホスト部に溶け込んでいるハルヒをぼんやりと見る。

「…ねぇ、皆は分かってるのかしら」

「何をだ」

「あの子を正式なホスト部に入れたら私は正体を明かさずにはいられない。きっと勘の良さでバレちゃうわ。だからね、その前にしっかり見ておかないと。あの子はちゃんと信用出来る?可愛いけどね、可愛いのは認める」

悪い子には見えない。むしろその辺の女の子よりもこざっぱりした性格なのだろう、ミーハー要素も見つからない。だから安心は出来るはずだ。なのに、少しばかりの不安が過る。

「何だ、お前はあの子に妬いているんだな」

「…何でそうなるの」

竜胆は小さく溜め息を吐いて睨むように鏡夜を見た。

「お前のポジションを奪われる、そう思っているんだろう?」

「本当に鏡夜って腹黒い。私、そんな事思ってない。心だってそんなに狭くは無い。そもそも私のポジションって男装要素だけだったの?」

そっちの方が失礼だわ、竜胆は呆れるように手のひらを上げた。

「それに光馨だけじゃない皆の視野が広がるのは嬉しいわ。だから私は本当に不安なだけ。バレたら私は終わっちゃう。後約二年、なんとか誤魔化し続けないと」

「大丈夫だ」

「何、その無駄な自信」

「俺が言うんだ、大丈夫に決まっているだろう?」

竜胆はその言葉に鼻で笑った。この過剰なまでの自信はなんだろう。だが、鏡夜にはそれ相応の実力が伴っているから怖い。だけれど信じたくなる、この人なら大丈夫だと。

「ま、私は鏡夜の言葉に騙されてやろうじゃないか」

「騙すとは心外だな」

「あら、本当の事でしょう?」

鏡夜を信用しないで他の誰が信用出来よう、竜胆にとって鏡夜とはそれくらいの存在だった。今更信じない手はない。




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