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崇が何かを見上げていると気付き、竜胆もそちらを見上げると環が窓際に張り付いたまま動かない。環、随分と早起きね。それに鏡夜が付き合うと思って?竜胆は心の中でご愁傷様と呟いた。環は朝早く美鈴のペンションに行くから竜胆も付き合えと言ったが、シャワーをしっかり浴びないと。その一言で一人寂しくペンションに向かって行った。
「鏡夜、ハニー先輩。何があったか想像出来るけれど、環が一人で泣いてたわ」
「知らん。朝五時半に起こされてみろ。嫌でもそうなる」
「僕はねぇ〜覚えてないかなァ〜」
絶対覚えてる。低血圧、AB型コンビ。接点が無いかと思われた二人は腹黒い事を竜胆は知っていた。それから残った皆でペンションに行くも環は落ち込んでいた。お手製の旅のしおりを細く千切りながら重い空気を背負っている。ハルヒに“知り合いの人”と呼ばれた事がショックだったらしいが、今更誰も相手にはしなかった。お茶を飲みながらハルヒを見ると、ハルヒの隣には見知らぬ男の子。
「桜蘭には慣れた?中学ん時の奴らとは会ったりしてんの?」
「うん、まあまあ。和美とかはよく電話くれるよ」
軽井沢で再会したのはハルヒの中学時代の同級生だった。
「卒業以来連絡ゼロじゃ友達じゃないんじゃん?ただの元同級生」
「和美って誰。ハルヒに女友達なんていたんだ」
「軽井沢で同級生と再会ねぇ。凄い偶然ね」
あ、このアールグレイ美味しい。美鈴さん、なかなか抜かりないな。竜胆は感動しながら紅茶とお供のクッキーに手を伸ばした。
「オイ、ハルヒ。仕事しなくていいワケ〜美鈴っちーサボリの人がいまース」
「ハルヒ。ジュースおかわりチョーダイ〜」
「うるさいなあ、美鈴さんが休憩くれたんだってば。環先輩もしおりちぎってゴミ増やすのやめてくれませんかね」
「ゴミじゃないもん、ハムスターのおうちだもん」
環は未だにしおりを千切っている。さっきそのしおりを盗み見したが朝6時起床とあった。その時点で無理があると書いてる途中でどうして気付かないのか。
「先輩ハムスター飼ってないでしょう」
「先輩じゃないもん、どうせ只の“知り合いの人”だもん」
その言葉を聞いてハルヒの同級生である荒井は吹き出すように笑った。
「…ホントはエリート学校で世界が違う高校行って藤岡が苦労してるんじゃないかって心配してたけどさ、元気そうでよかったよ、安心した」
「なんじゃありゃ。さわやか純情路線か。さわやか選手権は終わってるっつの」
「“明るくて照れ屋でちょっと天然。部活はバスケかサッカー部”ってとこ?」
「そーだよ、俺サッカー部!スゲーな、なんでわかんの?」
――おまけにかなりいい奴!光と馨に棘があるのを荒井は気付かない。それは天然のなせる技だった。
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