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「りんちゃ〜ん?」
「ハニー先輩。私遅れて行きます」
「…どうかしたか?」
「私今はまだ光と馨のお姉ちゃんだから」
行きたくないと言う環は鏡夜に押さえ込まれ、既に車の中へ。竜胆は光邦と崇に手を振ってからペンションの中へ入って行った。ノックをして返事が聞こえてから竜胆は部屋の中へと足を踏み入れた。
「あれ、竜胆ねぇ」
「ハニー先輩の別荘は?」
「後から行くわよ」
そう言いながら竜胆はベッドに座る二人の間に入って、持って来た救急箱を取り出した。馨の顔を横にしたまま頬の傷の手当てを始める。
「まさかこれだけの為に?」
まさか。竜胆は小さく笑いながら脱脂綿に消毒液をつけて優しく拭いた後に絆創膏を貼ってお終いと呟き、救急箱をしまった。それを床に置いてもう一度ベッドに深く座る。竜胆の行動に光と馨は首を傾げるだけ。竜胆の腕を広げて二人の肩に手を伸ばした。
「「な、何!?」」
「私がしたかっただけよ」
もう震えていないだろうか。さっきの光は確かに震えていた。馨に駆け寄る前に割れたガラスを見た時からもうその手は震えていた。怖かったんだろうね。双子って面白いよね。兄弟とはまた別なんだもの。兄弟よりももっと大事な、何かが繋がっている感覚。いなくなる事が怖い。もしかしてあの時の牡丹も同じ気持ちだったのかな?竜胆が二人に回した手に力が込められた。
「…馨。ハルヒちゃんを守った事はよくやったけれど気をつけて」
「は、はい…?」
「…光。大丈夫よ。小さな怪我だわ。もう大丈夫。馨はちゃんと隣にいるじゃない。今は私が間に居るけれど」
どうして竜胆ねぇはいつも僕らの事が分かるの?考えている事が何でもお見通し。言いたい言葉も代弁してくれる。恥ずかしくて言えない台詞でさえも。動くには少し窮屈な格好だったが光と馨は竜胆に腕を回し、竜胆の服を掴んだ。
「…懐かしいね。またこんな日が来るとは思っていなかったわ」
「「僕も」」
三人にもまた別の絆が確かにあったのだ。あの日無くなったはずの絆は徐々に形を作り出す。
「……あの時はごめんね、私ちゃんと謝っていなかったわね」
その言葉に光と馨は目を開いて少し考えた。
「…そりゃむかついたケド」
「…特別許してあげるヨ」
「そう、ありがとう」
終
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