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「あれ、竜胆先輩も爽やか対決に参戦ですか?」

「違うのよ。美鈴さんがどうしてもエプロンつけてって言うから。お手伝い。それでこれがお駄賃。初めて自分の力で働いて貰った物よ。何か嬉しいわね」

そう言いながら竜胆は鏡夜の座るチェアの横に腰を下ろした。それについて鏡夜は何も言わずにコーヒーを飲む。この二人には暗黙の了解と言うものがあるのだろうか、ハルヒが抱いた小さな疑問だった。

「ハルヒの予想勝者は?」

「全然分かりませんよ、そんな…」

「そうか?パッと見なら簡単だぞ?ハニー先輩はビジュアル的にアウトだし、環は黙っていればいけるだろうが勝負に熱くなりすぎる。普通に見れば光馨だろうが、しかし、大穴がいる」

確かに光邦では爽やかと言うよりも可愛い。環はすぐ熱くなるので暑苦しい。光と馨は適度に爽やか。鏡夜の言う大穴とは目の前に居た寡黙で真面目に汗を流す崇の姿。

「それじゃあモリ先輩が?」

「…が、ハニー先輩が脱落すればモリ先輩も辞退するだろう。と、なると双子で決まりだがそれではあまりにつまらない。勝負を面白くする方法はいくらでもあるんだからね…?」

「あはは、今の鏡夜がある意味一番爽やかよ?」

竜胆は笑いながら言う。ハルヒはそれに密かに共感していた。

「おいでアントワネット」

そう言うのは環。爽やかにじゃれていると思えばアントワネット(環の飼い犬)は主人をペロペロと舐めまくり、結果環は爆笑して全く爽やかに見えない。

「…あの犬は一体…」

その犬が急に三人の方向を向いた。それに身を引いたのは竜胆だった。

「…来る…!」

そう言った瞬間アントワネットは物凄い速さで竜胆へ突っ込んできた。ハルヒの横をしゅんと通り過ぎた大型の犬は竜胆を押し倒した。

「ちょ、ま、う、こ、こらっ!きゃっ!く、くすぐったいっ…!アントワネット…!」

押し倒されながら、顔やいろんな所を舐めまくられながら竜胆は重いともがいている。そんな光景を見てハルヒは一体何が起こっているのか理解が出来なかった。

「…この状況は?」

「何故かアントワネットは竜胆がお気に入りでね。遭遇する度この挨拶だ」

光と馨が餌をちらつかせるまで竜胆への挨拶は続いたままだった。そしてアントワネットがいなくなった竜胆は疲れた様にぐったりしまま芝生に伏せていた。もう髪も化粧をぐちゃぐちゃでひどい光景だった。


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