43 (1 / 2)
7月26日AM6:00。只今絶賛夏休み中。特に予定も無い学生ならば本来なら寝ている時間だろうが、竜胆は早起き。起きた後歯磨きをして洗顔した後日課の軽い運動をしようと着替え終えたその瞬間の事、竜胆は突然鳴った携帯に体をビクリと震わせた。こんな朝から一体誰だと思えば着信画面に須王環の名前があった。
「はぁ?ハルヒちゃんが行方不明?誘拐?破産で夜逃げ?え?一体どれが本当なわけ?」
電話越しから色んな声が聞こえるが、遠かったり近かったり。環が電話を全て繋げているらしい。ホスト部電話会議の始まりだった。どうやら環は夏休みに入ってから何度もハルヒの家に電話しているが、一度も出ずに蘭花の職場にも連絡がつかないらしい。
《きっと家賃などが払えずに無理矢理奉公に出されたのだ!》
「ちょっと環落ち着き――…」
《もしかして夜逃げか!?携帯!?ハルヒがそんなもの持つか!俺は知っているぞ、庶民の間には夜逃げ屋という秘密結社があって…》
《ドラマティックな妄想中悪いが環。ハルヒなら軽井沢だぞ?》
――そして皆の話を纏めるとハルヒが破産で夜逃げで軽井沢に誘拐
「ワケわからんから」
竜胆は小さく呟いた。そして動揺したお金持ちのご子息達は即準備をした後車を走らせヘリポートへ。そこから軽井沢まで一直線だったのだ。
「ハルヒ――!無事か――!」
そんな光景を見てハルヒが声にならない叫びと大粒の涙を零したのは言うまでもない。
「まあッ☆カワイイ坊や達だこと☆みんなハルヒちゃんのお知り合い!?」
そこに居たのはぶりぶりの服を着て、がっつり化粧をするフリフリのオカマさんだった。オカマと言えば蘭花しか知らない彼等にとって衝撃的だった。
「初めまして☆ここのオーナーの園田美鈴(本名功42歳)でーす☆」
「蘭花さんとはお店のお仲間でいらっしゃるとか?」
そういうのは鏡夜。鏡夜はハルヒが軽井沢に居る理由も全て知っていたに違いないが、あえてそれを言わなかったのか。面白くなりそうだから、と。この貪欲な奴め。環と竜胆は鏡夜を睨み付けた。2年前にオープンさせたペンションは従業員を雇う余裕はないが、蘭花が社員旅行で留守の間一人のハルヒが心配だし、ハルヒも安くて良いからと美鈴はハルヒを預かることにしたらしい。
[
prev] [
next]
[
bkm] [
TOP]