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「悪かったわね、どうせまっすぐじゃないわよ、けどあなたが勝手に間違えたんじゃない!あなたのせいでこっちはなんだかいつも落ち着かないのに自分は悠々と次席をキープして…もういい加減にしてよ、これ以上人の気持ちまで歪ませないでよ…!」
そう言うと綾女は駆け出して行ってしまった。
「成績コンプレックスねー」
「こんな人に負け続けちゃねー」
それとは違うみたいだよ。あの子は外見を気にする普通の女の子。竜胆は環の背を押した。
「環。追いかけなさい。理由は分からなくても泣いてる女の子を慰めるのが役目でしょう?」
綾女を追いかけた環の背を見送って竜胆は光馨の肩を掴んだ。
「さて、ここでお兄さんから問題です」
「「はぁ?」」
「こまめにストパーをかけ直さないといけないくせっ毛を持った女の子がいます。その子は自分の髪がコンプレックスでした。そんな子を慰める方法とは何でしょう」
「そんなの」
「くせを生かしてパーマをかける」
「はい、馨正解!さて、準備だ」
竜胆は携帯を取り出して連絡を取りながら歩き出した。その後ろに皆続いて行く。何故?と首を傾げるハルヒ。
「皆の衆集合!とはいえ雨の日もお客様を楽しませてしまうのがホスト部だ!6月の新たなイベントを思いついたぞ!」
環の作戦を聞けば竜胆に続き鏡夜も携帯を取り出した。
「さて、綾女姫は」
「僕らと来てネ」
「え?どこに…」
「いらっしゃい。出張美容室へ」
雨の日がいつか綺麗に晴れる為の準備期間の様に。心の雨は光り輝く一歩手前。それに気付いた瞬間きっと晴れ渡る。そして気付くのだ。空はこんなにも青く澄んでいて綺麗だと言う事に。その空はどこまでも繋がるという事に。女性達が扉を開くとそこには一面に咲いたあやめ。
「素敵!あやめ祭りですのね!」
「そう。この雨の季節にこそ美しく咲く花をみんなと楽しもうと思ってね。さあ、綾女姫も御一緒に」
そこにいるのは綾女の姿。きっちりしていたストレートパーマではなくウェーブのかかった長い髪。そして眼鏡は取られ化粧を施せば居るのは光り輝く彼女。良い事をしたと満足したのは良いが、その後綾女はホスト部に顔を出すようになり、環の常連として普段通りの彼女が居たのでした。環は彼女の発するモールスに困惑していたが、彼女らしいと竜胆は笑った。そして空を見上げるとそこは梅雨が終わり晴れ渡った空。夏が近付いてきた。
終
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