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新聞部部室前で隠れていれば荒々しい足音が近付いてくる。

「今は証拠がなくとも奴が尻尾を出さざるを得なくなる様な記事を書けばいいのです。しかし鞠が飛んで来たのを利用して怪我の偽装までしたのはほんと無駄骨でしたね。とにかく明日の一面に奴を陥れる記事を――…」

「ふーん」

「やっぱそーゆー事なんじゃん」

よくもまぁペラペラと喋ってくれたものだ。録音されているとも知らずに。

「ま、バレバレだったけどね」

「気付いてないのなんて殿くらいなんじゃん?」

「貴様ら…」

「言っておくけどうちの殿に手ぇ出したらただじゃ済まないよ?」

「常陸院はもちろんうちの部全員の家を敵に回す事になるけど覚悟あんの?」

立派な脅しだったが、これくらい言った所でどうてことはなかった。

「やはり親の権力を利用して…その指示を出してるのが須王なんだな!?」

それを聞いて竜胆は小さく笑いを零した。そして新聞部部室へと足を踏み入れる。

「違うよ〜?タマちゃんはそーゆー事しないよ?」

「環の指示?妄想甚だしいよ」

「あのねぇ僕らはタマちゃんの事が大好きだからねえ、だからタマちゃんをいじめる人は許さないの!」

皆思い出すの環と出会った時の事。

「「アホだけどね」」

「そのアホさがいいんだって」

「彼の人柄のおかげで情報網にも恵まれてますし?」

「ちょっと鏡夜。それにどうして自分も入っていないわけ?」

環の人柄のお陰で敵はいない。情報も自然と集まってくる。それよりももっとディープな事情だって入ってくると言うのに。まぁ、ここは環に譲ってあげる。竜胆は小さく微笑んだ。

「それで?ここ数日のおたくらの企みを録音させてもらったディスクはどうしたらいいのかな…?」

ここまでくれば新聞部は何も言えなくなった。釘を刺し、今後新聞部の約束を取り付けた後皆は未だに隠れているであろう環とハルヒの姿を探した。

「あれ、新聞部は?」

「「急用で取材中止だって」」

「何!?」

「これからはまともな記事書くとか言ってたよ」

「廃部にならなくて済むんじゃない?」

環は深く理解はしていないがとりあえずはそれならば良いかと微妙な返事をした。光邦に手を引かれて環は部室へと連れて行かれる。

「鏡夜先輩。“須王”ってそんなに凄いんですか?」

「ああ…まあ7名家のひとつだしな。事業としては古くから金融業を基盤に手広く扱っているが…聞いた事くらいないか?ロワグランホテルとか桜都劇場とか」

「あ、TVでよく聞く…」

「後はおまえも知っての通り学校経営と…」

「どこの学校ですか?」

え?知らないの?と言う様に皆は振り返った。そこには首を傾げているハルヒ。

「「「桜蘭だよ」」」

「ハルヒちゃん。奨学金も貰ってる事だし、学校の理事長名くらいは知っておいても良いと思うけど」

「そう考えるとおまえは環の家の援助で入学できている様なもんじゃないか?」

鏡夜の言う事も一理あると竜胆は笑いながら思った。

「竜胆ねぇ」

「何か楽しそうだネ」

「そうねぇ。皆が環の事が大好きなんだなぁと思っていた所よ」

勿論私もだけどね。言っておくけれど私は皆の事が大好きよ、そう言うと光と馨は左右から竜胆を抱きしめた。歩き辛いな、そう言いながらも竜胆は笑みを浮かべる。




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