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「ハルヒちゃん〜待って待って」
「どうかしたんですか、竜胆先輩」
ふぅと小さな息を吐いてから竜胆先輩は自分の隣に並んだ。やっぱり自分と比べると背が高い彼女は女性の平均身長以上だろう。部活動をしていない時は女装をしたりしない為に、今の彼女はスッピンというやつだ。女装時は化粧をがっつりしている割りに肌が綺麗だな、なんて思った。やはり気を使っているのだろうか。
「ん?どうしたハルヒちゃん」
「いえ。竜胆先輩こそどうしたんですか?もうすぐ授業始まりますよ」
「自分は保健室に行くよ」
「具合、悪いんですか?」
その様には見えないけれど。かと言ってサボるタイプだと思えない。
「まぁ、そういう事だ。女の子って大変だよね、色々と」
あ、そういう事ですか。ハルヒは小さく納得した。
「そういえばハルヒちゃんさ、ちゃんとお肌のケアしてる?」
「父がうるさいので最低限はしていますけど…」
「そっか。なら今度サンプルあげるから使ってみてよ。手間要らずのやつ」
それはどうも。自分にとってはあんまり嬉しくはないけれど、貰える物なら嬉しいし、そういう物ならば父が喜びそうだ。
「竜胆先輩の家は化粧品を作っているんですか?」
「言った事なかったっけ?化粧品だけじゃないよ。ケア用品から美容室、エステ経営、美容整形にヨガ教室。美容に関する事は大体手を伸ばしてるよ」
「へぇ。通りでそういう事に詳しいはずです。将来は家業を継ぐのが夢なんですか?」
「まぁね、そんな感じ」
竜胆は笑いながら自分のサイドの髪をくいっと弄っていた。そうか、家業を継ぐのが夢なんだ。でも夢の為に桜蘭に通う理由が分からない。しかも牡丹という双子の兄弟の名前で。うん、よく分からないや。ハルヒにとって竜胆の新たな謎が出来てしまった。
「んじゃハルヒちゃん。また部活でね〜」
手を振りながらハルヒも自分の教室へ歩く。うん、結局竜胆先輩の事はまだ分からない。
終
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