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「あら、ちょっと待ってハルヒちゃん。髪直させて」

「え?あー…はい、すいません」

ハルヒは突然やってきた竜胆の行動に疑問を抱きながらも頷いた。

「よし、終わり。ごめんね、お節介で。でもこういうのは気になっちゃってねぇ」

そう言うと優しく微笑んだ竜胆は手をひらひらとさせながら歩いて行った。その後ろ姿をハルヒはなんとなく見送った。よく疑問に思うのだけれど、竜胆先輩が桜蘭に通う理由、そして双子の牡丹のまま通う理由だ。挙句の果てに何故バレそうな女装を趣味としているのだろう。夢を叶える為だと以前聞いた事はあったけれど、それが何かすらも分からない。そう思えば自然とハルヒの視線は竜胆に向けられる。


柊竜胆の観察日記@


本日の部活動について鏡夜先輩に言わなければならない事があると2−Aの教室に向かっていた。教室の前でハルヒは目的の鏡夜先輩と楽しそうに話す竜胆と環の姿があった。そう言えばあの三人は同じクラスだった。確かに部内でもよく親しげに話している所を見かける。部の話だけではなく、クラスの委員会や授業についても話しているし、いじられて涙を零す環先輩をなぐさめているし、鏡夜先輩にものを言えるのは竜胆先輩だけかもしれない。ハニー先輩とは甘い物を食べる同盟とか組んでいるみたいだし、モリ先輩とも笑い合っている所を見る。それに猫澤先輩とも仲良し気に普通に会話をしている所見る。人当たりが良く、気を使える優しい人だという事は分かる。

「鏡夜。ちょっと部の経費についてなんだけど――」

所々聞こえてくる声は一応男性verの喋り方かもしれない。そういえば彼女はよく女装verの時と男性verの時に口調を変えられるなと思う。一人称まで変えるのだから驚き。部員達の前ではそれが緩むらしいけど、“私”“自分”“俺”を使い分けている。なんとも器用な人だと思った。

「あれ、ハルヒちゃんだ」

ひらひらと竜胆はこちらに向かって手を振っていた。

「ハルヒじゃないか!こんな所までどうしたのだ!?」

「あぁ、鏡夜先輩。申し訳ないんですけど、今日は委員会があるので少し遅れます」

光と馨に言えれば良かったが、自分が委員会だと思いだした頃には光と馨の姿が見つからなかったのだ。職員室に寄ったついでだとハルヒは動いたのだ。

「わざわざご苦労様」

鏡夜が軽く手を挙げたのを確認してからハルヒは身を翻した。後ろからもう帰っちゃうの?なんて環先輩の声が聞こえたが授業があるのでこの際スルー。


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