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「だから君達には感謝してるのヨ。学校でもそれなりに元気にやってるみたいだし、男の子みたいだけどちゃんとカワイクしてくれて……ね?須王環君?」

環はようやく自分の名前が呼ばれ勢いよく押入れから出て来た。

「おとうさ…」

「君ってばハルヒを最後まで男と勘違いしてたんだってねェ〜?その上頭はたいてくれたらしーじゃない?」

「うっ…俺は最低の人間です〜〜…!」

環は涙を零しながら逃げて行ってしまった。それを追おうとしたが止めたのは蘭花だった。そして一番に目が合ったのは竜胆だった。そして竜胆達は目の前の光景を見ていた。

「おミソベースでエビさんとカニさんは入ってるの、最後はうどんでシメるの。おコタで食べる」

「ハイハイ、豚肉いっぱいいれましょうねー」

「どうでもいいけどお金持ちでも鍋とかするんですね、しかもコタツって」

「鏡夜んちに掘りゴタツある、毎年そこでお鍋する」

少し離れた所に居るのは環とハルヒ。それよりも離れた所で様子を伺っているのは竜胆達。

「なんだか“ザックリ母さん”と“泣き虫息子”みたいな構図になってるワ…」

「つーか殿はなんでカタコトなワケ?」

「いやそれより、そもそもコレが何プレイだろうな」

「尾行プレイよ、鏡夜君!」

このままじゃ目立って仕方ない。先程からチラチラとこちらを見る視線が集まってきているが、蘭花はそれでも嬉しそうだった。

「ていうかいい男を沢山引き連れて歩いてみたかったのよ!」

「わざわざ竜胆ねぇを」

「着替えさせてまで…」

竜胆は女性物の服から男性物の服に着替えさせられていたのだ。目が合ったと思えばすぐに着替えてとのお達し。こういう無茶な所は本当にハルヒとは似ていない。むしろ環とそっくりだ。誰もがそう思った。スーパーに入ると皆思い思いに行動し始めた。

「「竜胆ねぇ!庶民コーヒー売り場発見!」」

光と馨に引き摺られながらも竜胆はそちらに目をやるの値段の安さに驚いた。

「…基本的に商品の値段が三桁よ…下手したら二桁…高くても千円以内って…」

「「コーヒー一杯より安いヨ」」

基準が分からない。未知の空間に目を輝かせた。人や物でごちゃついていて、活気がある。クラシックではなく魚や店の歌が流れる空間。自分達の価値観はここまでも違うものだと叩きつけられている気分だ。

「…竜胆。メロンが1500円らしい」

「嘘、それはありえないよ。ヤミ取引か何かじゃないの…?」

「あら鏡夜君に竜胆ちゃんってば☆コレは庶民向けのメロンよォ〜!そんな高いメロン置いてどーすんのヨ☆」

「…お父さん…!何してんですか、いい加減にして下さいッ!」

ハルヒは部員達全員を発見してしまい、連れてきた父に詰め寄った。そしてハルヒは強制的に皆を外へ出した。そして藤岡家に戻りハルヒの作った白菜が多めの鍋をわざわざ出したコタツに入りながら皆で食べた。それは少し不思議な光景だった。狭い部屋とは縁がなかったホスト部員達。こんなに沢山の男友達を家へ呼ぶ事なんてなかったハルヒ。娘の事を分かっている男を前にした蘭花。

「スゲー!なんか肉かてーぞ!」

「庶民肉、庶民肉!」

「ん、でも予想より美味しいよ」

「はは、よく味わっておけよ」

それでも皆が楽しんでいたのは言うまでもなかった。




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