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「ハルちゃん、ハルちゃん☆僕ハルちゃんの手料理が食べたいなぁ」
「今からじゃ時間かかりますけど?」
それでもハルヒが作る事は了承してくれた。それに泣く光馨環の姿。三人の内誰かが言ってもハルヒは了承してくれなかったと思うけれど。そう思いながらスーパーへ買い出し行くと言ったハルヒに皆着いて行く事になった。階段を下りて少し歩いた所で皆は人とすれ違った。その人物が行く先を見ていた。
「ねぇーハルヒと殿遅くない?」
「ハルヒがいなきゃ庶民スーパーの場所分からないしー」
「「呼んでくる」」
「じゃあ私も――」
そう言いかけた時竜胆は腕を掴まれて振り返った。竜胆の腕を掴んでいたのは鏡夜だった。やっぱりバレている。そう思った竜胆は逃げません、と言うように身を戻した。
「竜胆。俺が何を言いたいか分かってるよな?」
「はい、分かっております。申し訳ございませんでした」
竜胆は素直に頭を下げた。呼びに行った光と馨も戻ってこないのと、二人に気を使って光邦と崇は藤岡家へと戻って行った。
「俺は理由を訊いているんだが?」
「…分かってるから睨まないで。怖いから」
お手上げポーズをしようとするも鏡夜が腕を掴んでいるせいでそれは出来ない。ならどこまで話せば良い?竜胆は発する言葉を頭の中で考えていた。
「俺だけを避けているようだが?」
「…それは、うん、そうなのよ」
「何故?」
「…ちょっと恥ずかしかっただけなのよ、本当に」
きっとこの感情はそういうもの。私自身をちゃんと“竜胆”として見てくれる嬉しさと全てを知られているような恥ずかしさ。きっとそう。そうなのよ、自分に言い聞かせる。
「鏡夜が嫌いなわけじゃないの。本当に…ただ、ちょっと私のナイーブな心の一部に鏡夜が触ったから照れただけなのよ」
「ナイーブな心の一部?」
鏡夜は竜胆の言っている言葉の意味が分からないと眉間に皺を寄せるも、それについての答えは返ってくる事はなかった。それ以上は何も言うな、と言う様な竜胆の微笑みに鏡夜は掴んでいた竜胆の腕を放し小さく溜め息を吐いた。
「りんちゃぁーん、きょーちゃーん!おいで〜面白いもの見れるよぉ〜☆」
皆が戻って来ないのはその面白いものが原因か、そう思いながら鏡夜と竜胆は階段を登っていく。
「エスコートしましょうか、お嬢様?」
「…そう?よろしく頼むわ、騎士様」
竜胆は高鳴る胸の鼓動を隠すように空いている手で自分の心臓を押さえた。私ってば鏡夜に対して結構恥ずかしい事をしていたのね…ようやっとそれに気付いた。それでもまだ言えない。この気持ちは声にしないと誓う。
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