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ハルヒは目の前の光景に驚きを通り越して呆れ、理解出来ない状況として捉えていた。ひらすら無駄に甘い台詞を吐く須王環。同じ顔の二人常陸院光馨がくっつき合い、その状況を見て喜ぶ女子。爽やかな笑顔のまま逃げるなと脅しをかける鳳鏡夜。女子の格好のまま女子達にメイクをし時に甘い言葉を囁く謎の女子柊竜胆。三年には見えない甘えっ子の埴之塚光邦に強面ながら光邦に毛布をかける銛之塚崇。それをまとめてホスト部らしい。確かにやっている事はホストさながら。お茶とお菓子、一緒に話をする接待。これを受け入れられる日が来るんだろうか、いや、来ないで欲しい。ハルヒはそう思った。

「あれ、柊先輩。今日は男子生徒の制服なんですね」

「まぁね。女装は趣味だから。毎日女装ってのも疲れる」

「そもそもどうして女装なんですか?正しく言えば男装、じゃないですか」

ハルヒの言葉に竜胆は驚いた。何でバレた?この格好をしていても女装をしていても、特例を除き自分が女だとバレた事はない。部設立当初から来ているお客様方にもバレた事はないのだ。なのに、藤岡ハルヒはたった数日で自分の正体に気付いたのだ。竜胆は小さく笑いながら生徒手帳を見せた。そこはちゃんと男の所に○がしてある。

「え…本当に男性だったんですか?」

「でも、どうしてそう思った?」

「いや…父がオカマバー勤務なもので、女装には見慣れているんです。柊先輩はどう見ても女装に見えないと言うか…」

あ、失礼な事を言ってしまってすいませんと言うハルヒの頭を竜胆は撫でた。

「ありがとう、それは単純に俺は美しい…うわ、環みたいだな、この台詞。とりあえずありがとね」

ヒラヒラと手を振って竜胆は歩き出した。そして向かうのは決まって鏡夜の所だ。環がハルヒの不憫さを聞いて手に職をつけるという意味でホスト修行に及んでいるのを遠目で見ながら竜胆は鏡夜の隣に並んだ。

「…あの子、もの凄い勘が鋭い」

「何だ、もうバレたのか?」

「“もう”じゃない。“初めて”バレたの。でも、少し嬉しい」

「何故?」

「本当の竜胆に気付いてくれた事よ。これは光と馨にとっても良い事になりそう」

竜胆は小さく笑った。そして視線の先を光と馨に移す。


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