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「で、お父様はどちらへ?」

もしかしてそれのせい?まぁ、あの人達よりかはマシか、とハルヒは溜め息を吐きながら務め先のママが風邪で寝込んでいるから看病していると告げた。

「なら、ちょうど良かったわね。はい、これ。私からお土産のフルーツゼリー。大した物じゃないけれど、そのママさんにも持って行ってあげて」

「あ、ありがとうございます…」

そう言いながらハルヒはゼリーを受け取った。普通の事だったが久しぶりの常識人に会った様な気がしてハルヒはやっぱり竜胆に少しばかり感動したのだ。が、男達は物珍しい光景に勝手に動く。押入れを開けて服を物色したり、トイレを貸せば狭いと泣かれたり。数分の事で既に疲れてハルヒはとりあえずお茶を淹れる準備をした。

「あ、ハルヒ。お茶ならホラ。うちの父親のアフリカ土産」

「ありがと…」

「ミルクティーが合うんだけど、ミルクある?」

「牛乳ならある…」

そう言いながらハルヒは少し考えたようにキョロキョロしていた。

「バカッ!なんて事をしてくれたんだおまえらは!あんな物をあげてハルヒに恥をかかせる気か!見ろ!困り果てたあの姿を!」

――ティーポットがないんだ…!そしてそれを言い出せずにいる、だったら返して貰うしかないと思ったがハルヒは既に急須で紅茶を淹れていた。これを庶民の知恵だというアホな環を竜胆は横目で見ながら立ち上がった。確かに未知の空間だということは分かる。自分達が知らない常識がハルヒにとっては普通。だからこそ自分達の心無い一言でハルヒを傷つけてしまうかもしれない。

「この勝負…ハルヒに恥をかかせた方が負けだ…!」

「何故勝負事に発展させる必要があるのかは皆目見当がつかんがまあ頑張れ」

「アホなのよ、アホ」

竜胆は本棚を物色する鏡夜の隣に並びながら自分も本を物色していた。

「随分難しい本が並んでるわね」

本棚の中は法律関係の本ばかりだった。手に取ろうとした瞬間、自分が今どうしてここに居るのか疑問に思った。自分は無意識に鏡夜の隣に居た。今思い返せばそんな事過去に何回もあった。何かあると鏡夜のもとへ行く。と、言う事は自分自身気付いていなかった事だったの…?

「竜胆?どうかしたか?」

隣の鏡夜が自分をじっと見ていた。自分の名前を呼ぶ低い声とかその表情とか、今までどんな風に接していたのか分からなくなりそうだ。

「…何でもないわ」

そう、これは何でもない何でもないはず。




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