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竜胆はその日もいつも通りの休日を過ごす予定だった。当然美容の為に早寝早起きは常識。寝起きの野菜ジュース。朝食は軽く汗を流しシャワーを浴びたその後で。朝食の後は学業や作法、必要な知識を身につける、世界のニュースをチェックするのも忘れずに、昼食の後はメイクやファッションについて勉強する。涼しくなった夕方には軽い散歩を兼ねて敷地内を一周、自宅のプールで軽く運動。ぬるめのお湯と乳白色の入浴剤が入っているお風呂で半身浴をしながら読書。その後軽めの夕食の後、明日の仕度をして早めの就寝。それが竜胆にとって何の予定も無かった時の優雅な休日の過ごし方。本日もそうなると思っていたが、一本の電話によってそれは大きく変わってしまう。
「………鏡夜?」
《その間は何だ?》
そんな事言われても説明したくもない。竜胆は電話越しにも関わらず笑みを貼り付けた。
「いえ、鏡夜がこんな早くから起きているとは思ってもみなかったから。それで用件と言うのは?」
うん、うん、分かったわ。すぐに準備する。そう言ってから竜胆は電話を切った。そして先日と同じ様にその場にしゃがみこんだ。同級生と電話するのに一々こんな反応してどうするのよ、そう言って頬を軽く叩いた後竜胆は立ち上がった。そして迎えに来た車に乗り込んで一つの目的地へと目指した。車から降り、後方に着いてきていた車から降りてくるのもホスト部の他の面々。部員達はハルヒが住む家を見上げた。
「へーここがハルヒん家かー!」
「結構でかいじゃん」
予想していたよりは大きい。自分の家とは比べ物にはならないが。
「これが庶民の集合住宅というものだよ」
集合住宅…聞きなれない言葉に皆は感心した。
「鏡夜…なんっなんだこの大人数は!俺はお前と竜胆を誘ったんであってあんなオマケは…」
「そうか、俺はてっきりお前が一人で来る勇気がないなら多人数の方がいいのかと…。余計なマネをしたな。では、帰ろうか、子供達」
「スイマセン、ごめんなさい」
誰かに着いて来て欲しいけれど、光と馨はなんとなく困る。だからと言って一人にされたくない。環の心情は複雑なものだった。
「済んだことは仕方ない。いいか者ども!忘れるな!」
そう声を出す環だったがそれよりも豪華な車のせいで人が集まってきていた。ベンツ&ロールス3台では目立ってしまったようだ。
「これはあくまで“たまたま通りかかったからと”いうさりげない訪問であり、断じて藤岡家の生活水準リサーチではない!まして今は噂のオカマさんなお父上も御在宅かと思われる時間帯。“しょぼい”“狭い”“ボロイ”等の単語は一切禁止!間違ってもハルヒやお父様に“帰ってほしい”などと思わせるような言動は…」
「環、周りに目をやった方がいいわね」
人を注意する前に観衆が出来ている事とこちらを睨んでいる人が居るという事を。睨んでいるのはスーパーの袋を抱えるハルヒの事だった。
「ていうか今すぐ帰れ…!」
「ハ…ハルヒ!」
「「「素朴さがまた良し!」」」
「帰れ、消え失せろ」
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