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「光、馨。行こ」

「「へ?」」

「ダンス、一緒に踊るんでしょう?」

そうしてハルヒと光馨は三人で仲良く並びながらダンス会場へと向かって行った。竜胆はその三人を見てから少し悲しそうな目をした。今は三人でも良いけれど、どちらかがハルヒを独占したいと思うのか、いつかハルヒはどちらかを選ぶ時が来るのか、また別の人を選ぶ時が来るのか。それを想像すると少し怖い様な気もした。

「牡丹の君!今日は女装をしていたのね!今までどちらにいらっしゃったの?」

「ちゃんと校内に居たわよ。色んな人とすれ違ったけれど、誰も気付いてくれなかったみたいなのよねぇ〜」

「「えぇー!」」

居たら絶対に気付いていたと言う様なお嬢様達の言葉に竜胆は眉を下げて微笑んでいた。それは知る人からすれば作り笑い。下手な笑い方だった。

「それで牡丹の君は何の変装を?」

「美女と野獣の美女よ〜!“美女”だなんてまさに私にピッタリでしょー!」

竜胆は笑いながら話す。本当に気付いて欲しいのは美女の部分ではなく、野獣の部分。隠れているけれど恥じる事の無い偽りの無い自分。

「竜胆。お前その格好でダンスを踊るつもりか?」

「だめ?いいじゃない、女装趣味として売っているんだもの、これくらい。今日の部の活動はこれにしてよ。折角可愛い格好しているんだから」

竜胆の言葉に鏡夜は少し考えた後小さな溜め息を吐いた。

「…なら今日だけ、特別な」

ポンポンと竜胆の頭を軽く二回程叩いた後鏡夜は今日の部活動について話す為に環の所へ向かった。そんな鏡夜の背を見てから竜胆は気まずそうに目を逸らしてからその場に蹲る。

「まぁ!牡丹の君!具合が悪いんですの!?」

そう集まるお嬢様達の為に竜胆は顔をあげた。

「まぁ、牡丹の君!お顔が真っ赤よ!熱があるのよ、きっと!」

「…い、いえ。大丈夫よ。うん、大丈夫なの」

まさか。何で今になって心臓が痛むのだろうか。何で今になって顔が熱くなるのだろうか。何で、何で今になって――…。




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