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「乙女の美…それは外面の美と権力や肉欲に負けない清い精神」

そういうのは鈴蘭の君。

「“女だから”“女のくせに”男の高圧的な女性蔑視にはもううんざり」

雛菊の君。

「僕らの誇り…それは同性同志であるが故の魂からの対等関係。例えばそう…それが恋愛関係であろうともね…」

そう言いきったのが部長である紅薔薇の君。それを聞きながら竜胆は眉間の皺を更に深くした。自分もいつからか“牡丹の君”と呼ばれるようになっていた。それはもしかしてこういうヅカ的なものから来ているのでは…?レズだろうがホモだろうがそういう偏見は無いつもりだが、自分がそういう目で見られるのは…いや、ちょっと待て。ヅカ的なものは女性が男装したりするもので…そう呼べるくらい美しい。あ、もうそれでいいんじゃない?竜胆は頭の中で解決し、光馨がやるゲームを覗き込んだ。お客様が帰られてもヅカ部の三人は第三音楽室に居座っているが、それは最早スルーしたいレベルだ。

「「つーかマジ帰れ」」

「光、そこ左」

「え、右じゃないの?」

「私達の崇高な愛に言葉も無いって感じ〜?」

「かわいそうよ雛菊。私達にはお得意のホスト技も無意味でお困りなんですわ」

そもそも何で桜蘭に来たのだろう。そんな疑問を持つのは何も竜胆だけではない。

「部長がハーフだか何だか知らないが…派手な外見で偽りの愛をばらまき純粋な乙女の心を弄ぶなど完全な女性蔑視!部活動を名乗りながら私利私欲に走りあまつさえ!こんないたいけな女生徒達まで巻き込むとは言語道断!僕は違う!ホスト部など即刻廃止してみせると…!」

「…成程。話はわかった。しかし部長が未だカルチャーショックで寝込んでいるのでまたにしてくれるかな?」

何かの策略でもあるのかと思えば、鏡夜は軽くあしらうだけだった。竜胆は自分も巻き込まれている事に小さな溜め息を吐き、紅緒の目をしっかりと見て言う。

「言っておくけれど私は巻き込まれた、なんてつもりはない。自分の意思でここにいるわ」

「何故だ…!牡丹の君と呼ばれる君なら僕達の事を理解出来るはずだろう…!?」

「…牡丹の君と呼び始めたのは誰か知らないけれど、理由も無しにこんな所に居ると思って?仮に女性蔑視を唱えたいのなら私だってロベリアに行っているわ。あなた達が本当にホスト部を廃止しようとしているのなら私だって黙っていないわよ」

竜胆は睨むように目を細めた。そして小さく溜め息を吐く。

「「竜胆ねぇよく言った!」」

「そりゃどうも」

そう言ってからソファに深く座り込みながら優雅に紅茶を飲み始める。一方言い切られた紅緒達は不服そうに目を逸らし、それをハルヒへと向けた。ハルヒは丁度皆にコーヒーを淹れてきた所だった。

「コーヒー淹れましたけど…飲みますか?」

「ありがとう…!なんて優しいんだ…」

「掃き溜めに鶴ですわね…」

「では5人で乙女お茶会にいたしましょー☆」

あれ?私の熱弁はどこへやら?いい加減諦めて欲しいと言いきったと言うのにそれは全く効果を成してはいなかったのだ。起き上がった環は慌ててハルヒを奪還した。

「君達は間違っているぞ!女と女がラブラブして何の生産性があるというのだ!」

生産性を求めるのは大きな間違いであることに気付いてほしいが。竜胆は溜め息を吐いた。

「…どうやら話し合う価値もなさそうだな。現状を知った以上こんな部に乙女を置いておくわけにはいかない!至急ロベリアへの編入手続きをとり、彼女達をヅカ部へ迎え入れる!」

「だから人の話しを聞け!」

竜胆は大声を張った。イライライライラ…珍しく竜胆のイライラゲージが溜まり始める。


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