29 (2 / 4)



「これは手厳しいな。ではどんな言葉を御所望で?」

辛辣な言葉に環がフォローへ出て来た。がそれと同じようにこちらに近付いてくる足音。

「そうだな。僕なら…決して彼女を一人にはしないね。戦うなら共に。叶わぬなら共に果てよう」

そう歩いてきた人の隣には何故かお使いに行っていたはずのハルヒの姿。ハルヒの隣の男子生徒も見た事がない。目立ちそうな外見。そして彼は跪きハルヒの手に唇を寄せ、

「この命尽きても永遠に君のそばを離れないと誓う…」

「な!」

突然光景に環だけではなく周りの女生徒達も驚きを隠せない。傍から見れば男同士。正しく言えば女同士なのだが。

「紅薔薇様ったら遅いですわー」

「困った人ね…こんな可愛らしい方をどちらで?」

どうやら竜胆が席についたお客様の知り合いの様だった。

「ああ…ちょっとそこでね。男装していても僕にはすぐわかったさ…ごらん、この澄んだ乙女の瞳を」

「私達も素敵な乙女を見つけたんだよ〜!」

竜胆はその中に居た小さめな女の子に手を引かれ、紅薔薇と呼ばれる人物の前まで連れて来られた。そして紅薔薇は竜胆の顎を軽く持ち上げじっくりと観察すると微笑んだ。

「君からは僕と同じ様な匂いがするな」

「申し訳無いけれど私は薔薇の香水が苦手なのよ〜でも趣味は良いみたい。とある会社の秋限定新作。魅惑の香り。日本国内では入手不可の物ね」

竜胆の言葉を聞いて紅薔薇は小さく微笑んだ。やはり同族。

「待っ…!勘違いだ!彼等は歴とした男…!」

そう環が駆け寄って来た時紅薔薇はハルヒと竜胆を庇いながら裏拳をくらわせた。

「さわるな俗物!噂以上に低能な…。歴史の浅い寄せ集め集団めが!」

なんとも失礼な話だと竜胆は眉間に皺を寄せた。

「何者だ…!桜蘭の人間じゃないな…!?」

「…いかにも…!」

この小芝居は一体何なんだろうか。悪役の様に見えなくも無いその三人は桜蘭の制服を脱ぎ捨てながら言う。

「聖ロベリア学院高等部2年天草紅緒!」

「同じく2年舞原千鶴」

「同じく1年石蕗雛子!」

「聖ロベリア女学院“白百合の会”通称“ヅカ部!」

それを聞いて呆然とする者と爆笑する者。竜胆はどちらかと言うと爆笑していた部類だった。その悪役が自己紹介する様なセリフは練習したのだろうか、そう言う意味で。聖ロベリア女学院は女の園と言われている。桜蘭からは車で1時間程の場所にあり、幼等部から短大まで。そして中・高は全寮制。校訓は博愛と貞淑。その中でヅカ部というのは女性を至上のものと考える乙女の集い。創設30年を誇る乙女の乙女による乙女の為の会。ヅカ部活動は“乙女お茶会”に“乙女とは何か”討論会。トップメンバーによる歌に芝居の発表会。それらを全て鏡夜が手に入れた情報だった。


[prev] [next]
[bkm] [TOP]
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -