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「あ、さっきの…ここの部員の方だったんですか」

「そうなの、2年A組柊牡丹。よろしく」

竜胆はハルヒの頭を撫でてから前髪を分けてみる。眼鏡の上から覗き込めば可愛らしい大きな瞳。この髪型は何だ。このださい眼鏡も信じられない。竜胆の手は色んな所に伸びていく。この細い首筋、手首、ウエスト。

「な、何ですか…?」

「…どう言った事情か知らないけれど、頑張って。とだけ言っておくわね」

うずうずする手をなんとか誤魔化して竜胆はハルヒの耳元に口を近付け、小さくお嬢さんと言う。それから向かうのは鏡夜のもとだ。

「ちょっと鏡夜。ホスト部の犬ってあの子女の子よ」

「…やはりそうか。今調べさせる」

「そう。後今日の三時半から来てくれる子達いるから空けておいて」

了解、そう言いながら鏡夜はパソコンに打ち込んでいく。竜胆は光馨にからかわれているハルヒに目をやった。

「あの子、原石よ…可愛いわ。私の手で変身させてあげたい…!」

「その気持ち悪い手の動きはやめろ」

だって仕方ないじゃない、可愛い子を変身させるの好きなんだから。わきわきと動かす手を竜胆はなんとか止めて腰に手をやる。

「…環は気付いてないのね」

「だろうな」

「ま、なんとかなるなる」

「男装部員が二人に増えたらどうしようか」

「あら、先輩がいるならあの子だってやり易いんじゃなくて?」

確かに。そう言いながら鏡夜は小さく笑う。男装部員は例外ではない。現に目の前の彼女は男装部員だ。男装部員が女装して一回転してしまったが。周りにはその事実を隠し続けなければならない。それがホスト部に入る時の条件だったのを思い出した。“竜胆”という彼女の本名は特別で、この学園ではホスト部員達とごく僅かしか知らないだろう。

「竜胆」

「ん?」

「今は“牡丹の君”だろうが、返事をするな」

「…鏡夜が呼んだくせによく言うわね…」

――俺は守るよ。あいつの約束を。あの時の約束を。鏡夜は竜胆の頭をポンポンと軽く叩いた。

「柊君は元気か」

「えぇ。元気にしているわ」




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