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「やってしまった…」

光はこっそり溜め息を吐いた。バイト先のショーウィンドウを拭くにはちょうど良いかもしれない。光は昨日の夜自分が言ってしまった事を思い出していた。

「あのね、光。…あなたの婚約者に会って欲しいの。茶道の家元の次男で。その、おばあ様が決めたのよ…」

そう言う母の顔は申し訳なさそうに。光はそれに笑って答える。

「うん、分かった。私嬉しいです」

だってようやく役に立てるのだから。相手はどんな人だろうか、名前だけでもちゃんと聞いていれば良かった。なんて淡い気持ちは婚約者と対面して崩れ去った。そう、相手は遊び人として有名な西門総二郎。光が通う英徳学園の先輩に当たるが接点は無い。むしろ接点なんか無い方が良い事を知っている。英徳学園を牛耳るF4。花の四人組と言われている男達。彼らは容姿端麗、家柄も金も地位名誉全て揃っているが性格に難有り。気に入らない人間がいれば赤札を張り、幼稚過ぎるイジメ開始の合図。一瞬で全校生徒が敵になる。F4の人間に逆らえば仕打ち。誰も逆らおうとはしない。靴を舐めろと言われれば舐めるだろう。まさかその4人の内の一人が婚約者だなんて。光は西門の質問を適当に答えながらそんな事を思っていた。だけれど、結婚出来れば誰でも良い。そう思っていたのに、一々うるさいから。気に入らないから。

「…うん、世の中の女全員あんたを好きになると思ってんじゃねぇーよ。それは流石に言い過ぎた…」

動かす手に自然と力がこもる。明日学園に通ったら赤札を覚悟しなきゃいけないのか。いやいや、あれはリーダーである道明寺司の仕業だって噂もある。それくらいじゃ…でも、自分が悪いのは事実だった。

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bkm
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