次の日、自主練の後学園に行けばまたもざわつく学園内。光は何度も溜め息を吐く。この学園に平穏と言う言葉はないのか、そう言いたくなる気分だった。通りすぎた生徒に話を聞けば、道明寺司が花沢類と牧野つくしを一週間以内に学園から追放すると宣言したらしい。光は慌てて西門を探しに走った。
「総二郎さんっ…!」
見つけたと思えばいつもの道明寺司、西門総二郎、美作あきらと新メンバーの青池和也の姿。光は小さく頭を下げて西門の腕を引き、物陰に隠れながら小さく言葉を紡いだ。
「ちょっと、つくしを学園から追放ってどういう事ですか!?」
「あぁーそれな、俺らも驚いてんだよ。しかも牧野だけじゃねぇ、類も追放だ言うんだぜ?司の奴そーとーキレてるぞ」
「そんな事じゃなくて!…止められないの?」
「あのなぁ、キレた司を止められんのはあいつのねぇちゃんぐらいなの。俺らにゃ無理」
「…金魚のフンか」
その言葉に西門は無言で光の後頭部を掴んで押した。だってその通りじゃないか!結局言いなりになっているようにしか思えない。
「で、あいつF4揃えて家に帰るって言ってっから、なんとか説得してみっけどよ…」
「…頼んだ。私は生憎道明寺さんを殴ってでも止めさせる事が出来る女じゃないし」
「殺されるぞ?」
「女の教育が悪いって総二郎さんも殺されるだろうね」
立場上婚約者。西門の婚約者だからこそF4の隣に居る光には道明寺に意見する権限なんて持っていない。光は先日優紀に言った事を思い出していた。“つくしは私が守る”具体的に私が出来る事って何なんだろう。家は道明寺家と対立出来る程そちらの方面に進出しているわけじゃない。かと言って、あの強さに自分の軽い攻撃が通用するわけじゃない。結局自分はどうすれば良いのだろうか。
「…牧野なら類がなんとかするだろうな」
「え?」
「例えばな、例えば。司がマジでキレて二人を退学にしたとしても、類は牧野を見捨てたりしねぇよ。だから、お前が心配すんな」
そう言う西門の顔を光は見上げた。呆然と口を開いて小さく呟く言葉。
「今初めて総二郎さんが少し優しいと思った」
「初めてかよっ!ありえねー!」
「ごめん、今までちょっとした偏見が」
「お前本当に難攻不落な!甘い言葉吐いても落ちねーし、顔一つ赤くしねーし、お前実は女が好きとか言うオチない?」
「私はノーマルだ!」
失礼な話だな、もう。光は西門の空いた腹に軽いパンチを入れた。嫌だな、あんなに落ち込んでいたのに一瞬で笑わせられた。何でこの人はこんなにも言葉巧みなんだろうか。卑怯だなと思った。
「…総二郎さんに道明寺さんの事お願いする、私人にお願いする事少ないんだからレアだよ」
「…あーあー面倒な事引き受けちまったなー」
終