つくし達が島での波乱の出来事を他所に光は平穏な生活を送っていた。一日中自分のやりたい事が出来る。自分で立てたお茶を一口含んで、苦笑い。これは今度本当に総二郎さんにお茶を立ててもらおう。ちゃんと評価してもらわなきゃ。
「松岡さん、おはよ…」
少し引き気味に光は本日バイトに入っている優紀に挨拶をした。もしかしたらつくしから何か聞いているのかもしれない。つくしはもう友達だと言ってくれたけれど、優紀はどう言うか分からない。そんな不安だった。
「あ、宮永さん!おはよ!あたし、宮永さんと話したかったんだ」
「え、私と?」
「つくしから聞いたよ。本当はお嬢様で英徳に通ってる事とか、つくしを助けてたとか、あたしと友達になりたいって言ってくれた事とか、今まで黙ってたのはあたし達に何かの被害が行かない様にだって。そんな事気にしなくて良いのに」
でも…光の言葉は弱弱しい。
「あたしも宮永さんと友達になりたい。ずっとそう思ってたよ。庶民とかお金持ちとかそういうの関係無しに友達になりたいんだ」
つくしの周りにいる子も良い子だよね。光は笑顔で頷く。
「えっと、優紀ちゃんって呼んでもいいかな?」
「うん、勿論。私も光ちゃんって呼ぶよ。それでね、色んな話聞かせて欲しいな」
「色んな話?」
「うん!だって、普段お金持ちの人達がどんな生活してるのか、本当に好奇心なんだけどね?」
「え、普通だよ、結構」
光と優紀は笑いながらバイトをこなした。たまにおかみさんに怒られて二人で顔を見合わせてからまた小さく笑った。つくしが格好良くて着いていきたくなるのなら、優紀はほんわかして隣に居たくなる。そんな雰囲気だと光は思った。
「百人斬りしたって本当?」
「違うよ、三十人くらい」
「えぇ!?光ちゃんって強いんだね」
「家のバカな父親がね、小さい頃から私に仕込んでたの。私を何にしようとしてたんだか…今となっては謎だけど。あ、優紀ちゃんに護身術がてら教えてあげようか?」
「えぇーあたしはいいよ。それよりつくしに教えてあげて」
「…大丈夫、つくしは私が守るから」
優紀ちゃんもつくしに憧れているんだろうと思った。つくしには不思議と人をひきつける何かがある。だから周りに人が集まって、F4もその一部なのだろう。
「今度、つくしと優紀ちゃん、二人を家に招待したいな」
「本当に?行ってみたい!」
元気な優紀の返事に光は笑みを浮かべた。祖母のいない時間なら大丈夫だろうし、おもてなしをしたい。案外普通なんだよと分かってもらいたい。それでいっぱい話をしたい。寝る時間なんか忘れて、楽しんで…光はその光景を想像し、更に自然な笑顔がこぼれた。
終
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