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登校すれば色んな視線が光に降り注ぐ。地味な子じゃなかった?強いらしい。百人斬りしたとか。凄い美人。そんな声にももう隠れる事もしないし、恥じる事をした覚えはない。背筋だけは曲げずに来たんだ、これからはもっと胸を張って歩ける。光の足取りは軽かった。

「あれ、総二郎さん、美作さん。おはようございます」

「ん?光――って地味眼鏡止めたのか?」

「やっぱり光ちゃんはその方が似合うね」

光は笑顔で返事をした。もう眼鏡もいらないし、地味だと笑われるお下げもやめた。肩にかかった長い黒髪を払った。

「けどさ、その頬の傷とか…包帯はどうしたの?」

美作の質問に光はやはり闘った。と答える。西門はもうそれに聞き飽きて肩を上げるだけだった。

「ねぇ、牧野さん、どこにいるか分かりますか?」

「牧野?牧野なら司と屋上にいるぞ」

どうして屋上?まぁそれは良いか。光は屋上へ足を進めた。その後ろには西門と美作。重たいはずの屋上の扉は意外と軽い事に気付いた。屋上の扉を開けてつくしと道明寺の姿を確認した。その前にはロープ、と言う事は仕返しでもしているのだろう、光は小さく笑う。

「あ。総二郎の婚約者」

先に気付いたのは道明寺だった。光は道明寺に向かって頭を下げる。

「え?昨日助けてくれ――…えぇっ!?」

光の姿を見てつくしは大声を上げた。昨日助けたくれた人、一緒に闘ってくれた人、いつもさりげなく助けてくれた人、だけではない。バイト先の仲間の姿。しかも英徳の制服、西門の婚約者と聞けば驚いたまま数分以上は固まるしかなかった。

「宮永、さん、だよね…?」

「初めまして…って言うのは変だよね。今まで黙っていてごめんなさい」

「何、牧野、お前知ってんの?」

「知ってるも何も一年以上バイト仲間で…え、宮永さんって英徳の生徒!?」

バイト仲間だぁ?三人は首を傾げた。バイトってあの和菓子屋の事か?一体どういう事だ?

「えっと、どこから説明すれば良いかな…面倒だから最初から」

どこから話して良いのか分からないし。そう言って光は再び頭を下げた。

「初めまして、宮永光です。家は華道の家元でこの度西門総二郎さんと婚約させて頂く事になりました。バイトは牧野さんと同じ所で一年の時から。理由は社会勉強とお小遣い稼ぎ等色々。牧野さんに言わなかったのは私自身特殊な事情がありまして、一般家庭の方をあまり巻き込みたくないので、こんな形になってしまいました。これでOK?」

全然OKじゃねぇ!そんな叫びが屋上に響いた。西門とつくしの物だった。簡潔に説明したのだけれど…これ以上何を説明すれば?光は首を傾げる。

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bkm
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