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「は?あいつの第一印象?そりゃ美人だとは思ったな」

茶会等で見られる程かっちりとではないが、現代風にアレンジされた髪型。傷み等微塵も感じさせない程綺麗な長い黒髪がさらりと彼女の動きに合わせてなびく。ハーフアップの後頭部には品の良い簪。淡い紫の着物にベージュの帯の色合いは抜群。ピンと伸びた背筋に所作の美しさ。伏せられた顔、瞳を縁取る長い睫毛は頬に影を落とし、淡いピンクの頬、紅。それら全て統計してランクをつけるのならAランク間違い無し。だが、生憎俺は生粋の清純派のお嬢様には興味が無い。あぁ、こいつが俺の婚約者。結婚しなければならないのか。美人だから良いか。それに温室の中で大事に育てられてきたのだろう、俺が女遊びしても何にも言わずに家で待ってるタイプと見た。それならばまぁ、良いか。結局の所俺にとっての結婚はその程度だ。

「初めまして、知ってると思うけど西門総二郎」

俺がそう言うと目の前のこいつは一瞬眉間に皺を寄せたような気がした。そしてすぐに優しく微笑む。

「初めまして。宮永光と申します」

にこりと微笑むその裏側を見たような気がした。そもそもどうして俺がこいつと対面しているのか。それは親同士が決めた婚約者との顔合わせだからだ。正直乗る気ではない。仲介者同士は、後は若い者同士で、なんて見合いお決まりの台詞を吐いた後俺ら二人を残した。きつく感じたネクタイを緩めて目の前のこいつを見る。

「…あのさ、俺は今すぐ婚約とか正直面倒なんだよね」

俺がそういうとこいつは知ってると言うように微笑む。

「君もそうでしょう?高校の内から婚約だの結婚だの言われても理解出来ないと思うし、もっと遊びたい時期でしょ?高校生だよね?」

まさか婚約者が出来たから今付き合っている女の子達と別れるなんて想像も出来ない。

「えぇ。英徳学園に。ですから、後輩に当たりますね」

居たか?英徳にこんな美人が居たら気付くと思うが、全く知らない。

「宮永って言ったら華道の家元か」

「えぇ」

その返事も品が良い。華道の家元と茶道の家元。まぁ、悪い話ではない。

「長女?」

「…えぇ」

「そっか。じゃあ、窮屈な人生送ってきたんじゃない?」

小さい頃から徹底された生活。俺らはその中で色々と発散してきた人間。比較的自由にやってきた部類。

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