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「…画鋲?」

随分と古典的ないじめをする人間がいるものだ。下駄箱を開けば普通に上履きが入っていたが、その中に一個の画鋲。針が上を向いていた。やっぱり来てしまったか。いくら軽く変装していたと言え、西門本人だったと言う事は皆分かるだろう。その西門がこんな地味眼鏡の私に話しかけたのだから標的になるのは分かっていた事だった。が、犯人もまだ関係が分からないから大きくは出て来ないと見た。上履きに入っていた画鋲をポケットにしまい、光は上履きを履いて教室へ。その間何かあったのかうるさいくらいに盛り上がっている。わざわざ人が集まっている方向へ行かなくても噂はすぐに聞こえてくる。

「牧野つくしと道明寺さんが朝帰りだって!」

そう盛り上がる声ときゃーと言う悲しい悲鳴のセットだった。牧野さんって意外にやるタイプ…いや、何かの偶然だと思いたいような気がする。

「ねぇ、宮永さん、あなたと西門さんってどういうご関係なのかしら?」

クラスでも牧野さん達の噂で持ちきりだと思っていたのに、我クラスはそうではなかったらしい。複数の女子が睨むようにこちらを見ている。

「祖母が西門家の方と知り合いなんです。ただそれだけ」

何だ、良かったわぁという声。羨ましい、紹介して、知らない人達が私に付き纏っている。この人達はきっと心の中で思っている。こんなに地味な奴が西門さんとつりあうはずがないし、相手にされるはずがない。私の方が、と目で言っている。正体を明かしたくなるな、光は不敵に笑みを浮かべた。眼鏡とってお下げ止めればなんとか…。

「よぉ、地味眼鏡」

「…何それあだ名ですか、プレイボーイさん」

二人顔を合わせれば嫌味合戦。偶然にも廊下に居たその横には美作と道明寺の姿。光は小さく頭を下げた。

「ん?誰だよ、その地味女」

「いや、こいつ意外と地味でも何でもないんだぜ?ほら、眼鏡とお下げ取れ!」

「ちょっと…!」

勝手に取られた眼鏡を返せと西門の手から奪い取った。リーチの差で簡単には届かない。西門は空いた片手で長い三つ編みを解く。

「で、宮永光。将来の俺の奥様」

「うげ」

何奥様って。そんな可愛らしい物じゃないって。光は眉間に皺を寄せたまま西門を睨み付けた。

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bkm
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