「ねぇ、宮永さん。デートってした事ある?」
「ん〜…ある」
今日はお客さんが来なくて暇だな。二人は少なからずの世間話をしていた。光は和菓子の並びを整えながら隣のつくしに答えた。
「えぇ!?彼氏いるんだ!?」
「…昔の話だよ、今はいないし、その予定もない」
つくしの言葉に光が見せる笑顔は少し寂しそう。光は女のあたしから見てもすごい美人なのに、彼氏がいないなんて考えられない。もしや性格が悪いとか…?いや、バイトを始めた時期は同じくらいだけど、性格が悪いなんて思った事もない。じゃあ、何でだ?つくしは首を傾げた。
「なー。庶民が喜ぶデートプランて何だ?」
「そもそも庶民がって時点であなたは間違えてると思うわ」
家に西門から電話があり、全ての予定を後日にしたと言うのにそういう話題はいかがなものか。光は小さく溜め息を吐いた。祖母は西門家の事を気に入っているので、そのご子息との婚約は喜ばしい限りで、仲を深めるのならば全ての予定をキャンセルしてもしなさい。という事で光は喫茶店に西門といるわけだが。これが西門作戦時間を作れば景品デートか。すんなりと終了してしまったゲーム。目の前の抹茶ラテを口に入れた。
「…抹茶ラテ失敗した。取り替えて」
普通のモカにしておけば良かった。そうすると西門の前にある物が羨ましくなる。
「注文すれば良いだろうが」
「残すのは勿体無いじゃない、でも飲みたくない」
「しらねーよ」
ここがさ、多分私以外の女の子だったら喜んで交換してくれるんだろうね。扱いにレディーファーストを感じない。薄い抹茶ラテを飲むしかないようだ。抹茶は抹茶。何も入れちゃいけない事を学んだ。
「多分司が牧野をデートに誘ったと思うんだよねー俺」
「へぇ」
だからこの前デートがどうのって話をしていたのか。で、どうしてそれを私に言うのだろう、光は首を傾げる。
「今度牧野紹介してやろうか?庶民だからお前と話合うかもな」
私は一応庶民ではない事を知っているはずなのに余計なお世話だ。
「…遠慮しておく」
「マジで?お前学園に友達いねぇだろ?牧野辺りなら価値観合うんじゃねぇ?」
お前もいないくせに!光はその言葉を飲み込んだ。
「…牧野さんは、巻き込んじゃいそうだから怖いんだ」
本当ならすぐに友達になりたい。牧野さんも松岡さんも友達になれたらなって思う。そうしたら普通に女の子同士でお茶したり食べ合いっこしたり買い物行ったり普通の話が出来るんだろうな。それは多分出来ないな。