《司と牧野がデートするらしい!》
…あのさ、夜にいきなり電話かけて第一声がそれってどういう事?こっちはもう疲れがMAXなんですけど…。早めに布団に入っていた光は西門の電話でもうすぐ寝そうな所を邪魔されたのだ。
《しかも、優紀ちゃんの彼氏とダブルデート!庶民デートだぞ》
「…それを道明寺さんがするかね」
感覚が合うはずがないだろうに。しかも一般人で道明寺の存在を知る人は少ない。英徳のように道明寺にそこまで気を遣うなんて事はないだろう。
《だよなー今時ダブルデートなんか流行んねーし、でも司は文句言ってたが行くな、ありゃ》
「…また幼馴染の勘ですか」
《…何、お前もう寝んの?早くね?ガキみてぇ》
寝るのを邪魔しているのがあなただと言う事に気付いて欲しい。
「…今日は予定いっぱいあって疲れた…」
華道茶道、習字にバイト、家庭教師。それから課題にと夕食の時間ですらままならなかったと言うのに。バイトがあるからと今日は誘いを断った事をもう忘れているのか…?
《最近ようやく根詰めなくなったと思ってたのによ》
「…それは総二郎さんが誘うからでしょーが……ほぼ毎日、連れ出されて予定を入れられない…」
《お前、何でそんな熱心なんだっけ?》
あぁ、もう目が開けていられない。どんどん瞼が重くなっていく。光はゆっくり瞼を閉じた。
「……夢、あるって言った………私の夢は…おばあさまに…認められる事……じゃなきゃ…他人の私は……宮永家の、一員じゃな………」
光の記憶はそこで最後。自分がどうやって西門との電話を切ったのか覚えていなかった。
「ん…」
光は目を覚ました時携帯を握っている事に気付いた。慌てて通話記録を見ると最後に喋ったのは西門だという事に気づく。そもそもあまり友達のいない光にとって電話する相手は限られているが。自分が一体何を喋ったのか全く覚えていない。はっきりと覚えているのはダブルデートの話だけだった。何か余計な話をしていなければ良いのだけど…。光はそのままリダイヤルのボタンを押した。
《……はい、もしもし》
今度はあっちが睡眠妨害されたようで不機嫌そうな声だった。
「…もしもし、光です」
《はぁ?朝っぱらから何だよ》
「…あのさ、昨日。私何喋ったか覚えてないの」
《…あぁ、お前途中で寝たからな。どんだけ早業なんだよ、お前!》
寝起きにも関わらず西門は声を出して笑っていた。それに光はほっと息を吐いた。
「ごめん、眠気がピークだったの。何か変な事を言っていないかって確認だった、ごめんね、起こしちゃって」
《…いや、あ、質問していいか?》
「どうぞ?」
《おばあ様に認められないと他人の私は宮永家の一員になれないってどういう事だ?》
それを聞いて光は無駄だと思っても電話を切ってしまっていた。それからすぐにかかってくる西門からの着信も光は出れずにいた。
終
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