光は眠気と戦いながら授業を受けていた。ようやくお昼になりランチを取ろうと立ち上がった時、光の携帯のバイブが鳴った。
「はい、もしも――」
《今すぐ学食集合な!》
それだけ言うとすぐに機械音。あまりにも一方的過ぎて呆れてしまう。それにしても今日は道明寺とつくしの噂で持ちきりになると思えばそれは全くと言っていい程聞こえて来なかった。私もあまり噂になるのは好きじゃない。百人斬りの噂が先走る為に直接何かを言ってきたり、そんな事は無いが、集めた画鋲がどれだけ増えた事か。絶対、指紋取ってやるからな…。そんな気分を抱きながら光は学食へと向かった。
「おーい!光ー!こっちこっち」
大声で呼ぶなっての!視線を集めたらどうしてくれるんだ、そう思ったが光に視線が集まる事は無かった。視線の中心は別の所。つくしと道明寺にあった。
「今日は一緒に食べないんですか?」
少し離れた所に居た西門、美作、そして和也の所で光は首を傾げながら呟いた。
「折角付き合ってんだ。二人きりにしてやろーぜ」
それは良いんだけど…その噂はいつの間に広がっていたんだろうか。光はとりあえず椅子に座った。つくしと道明寺を横目で見るも、二人の会話が盛り上がっている様子は無い。
「…あいつらどう思う?」
「ちょっと牧野かたすぎやしねえか」
「でも、まあんなもんじゃねーの、最初は」
「緊張かねぇ」
「ちがうよ」
和也はそれを真っ向から否定した。
「つくしちゃんは嬉しい時はどんな状態だってすごく嬉しい顔するんだ。今のつくしちゃんの顔はすっごく無理してる。ぼくには判る」
「マジ?無理してる?」
小学校時代の知り合いの和也なら言う事も分かる。
「…無理してまでつきあうなんて変だよ。つくしちゃん…」
つくしが無理してまで人と付き合うとは思えない。つくしは道明寺が好きという事で変わり無いはず。それでもやはり価値観の違いとかそういうのがあるんだろうか。光は立ち上がった。
「どーした、光」
「どーしたってランチ。学食まで来たんだから食べる」
「…お前なぁ、空気読めよ」
毎度毎度空気読めってお前には言われたくないんだが?
「だってこれは二人の問題でしょ?こっちが無理だの、つりあわないだのそういう事言ったって最終的に決めるのは二人。こっちは暖かく見守ってあげましょうよ」
さて何食べようかな、それだけ言うと光はカウンターに向かって歩いて行った。
「ホント光ちゃんはざっくりしてるなぁ」
「悩んでっかと思えば案外単純に出来てんだよ、あいつ」
「光ちゃん、今男子にモテモテなんだって」
突然の和也の言葉に西門と美作の二人は黙った。
「まぁ、確かに容姿端麗だからな」
「しかも、噂で強くて格好良い、いつも凛々しいって話だな」
「素知ってりゃあありえねー!」
「確かに!普通の女の子だよなー!」
そんな事を言われてる事等知らずに光は自分のAランチが来るのを待っていた。
終