「エスコートしてくれないんですか?」
光は首を傾げて目の前の男に呟いた。
「いや、お前がドレス着てんの初めて見た。和服もいいけどドレスもいけるわ」
いけるって何だ、それは。光はエスコートされながら車に乗り込んだ。そして道明寺家の門扉まで来ると警備が厳重。流石道明寺家。見渡せばテレビや雑誌等で見たことある著名人ばかり。光はそれに驚いた。
「こら、キョロキョロすんな。貧乏人みたいだぞ?」
どういう基準だよ、先に西門が降りた後光を待ち、優雅にエスコートをする。光も馴れたように手を伸ばした。車から降りれば光がキョロキョロと見回す事はない。完全にスイッチが切り替わったように見えた。
「総二郎さん、つくし居た」
美作と類と合流した後光は小声で呟いた。誰が見ているか分からないからおしとやかにおしとやかに、それを心の中で何度も復唱していた時だった。見つけたつくしは規模の大きさに来た道を引き返そうとしていたのだ。
「入り口はあっちだよ。ようこそ。道明寺司の18歳のパーティーへ」
「ちょっとォ、な、なんでそんなにすごいカッコしてるの?」
すごいカッコ?皆はスーツ姿だ。何もすごい事はないと言うのに。
「ったりめーだろ。道明寺家長男のバースデーだぜ」
「おまえコートの下何着てんの?」
「うちの母親の若い頃のワンピッ」
それを見て皆固まった後、少し離れた所でコソコソと話し合い。
「おい、光。お前牧野に何も言わなかったのか?」
「え、言ったよ。だからドレスか着物貸そうか?って言ったんだけど、いいって言うから、何かあてがあるのかなと」
「あるわけないよ、だって牧野だし」
「そもそもあの牧野に着物を着こなすのは無理だな。でも、あの格好は流石にまずい」
ならば、せめてこのショールだけでも貸そうか?クラッチバッグ持っていればなんとかなりませんかね?なるわけないな、の視線。
「…ん〜私は替え持ってきてないし…あ、ここなら椿さんいるじゃないですか。お借りすれば良いんじゃないですか?」
よし、それで行こう。光達はつくしのもとへと戻り、裏から椿の所へ向かった。
「あら、つくしちゃん、光ちゃん久しぶりね。今日はバカ弟のためにわざわざありがとう」
ドレスアップした椿に光は頭を下げた。今日は唯一家族で集まる日だと椿はアメリカからわざわざ帰って来たのだ。