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次の日の朝、光はつくしの様子を見ようと部屋を出た瞬間だった。隣の部屋から出てくる三人組。光はニッと微笑んだ。それは怒りを隠すような笑み。かえってその笑顔が不気味に思える。

「ごきげんよう」

「…ご、ごきげんよう…宮永さん…」

「…つくしと優紀ちゃんに何か用だったのかな?それとも嫌がらせしに来た?お礼言うようなたまじゃないしねぇ」

くっと悔しそうに俯く顔を見れば、またか、と光は溜め息を吐いた。

「…醜い顔、もっと醜くしてやろうか…」

光がぼそりと呟けば、百人斬りの噂を聞いている三人組はひっと息を飲んだ。

「本当なら今すぐにでも殴っても良いと思ってるんだ、私。でもね、つくしがやらないならやらない。その厚意を仇で返すって言うのなら私はつくしに内緒であんた達を殴るなんて動作無いよ。それで足りないって言うなら権力使って全力で潰してやる」

脅しじゃない、と言う様に光の足は風を切った。そして真ん中にいた女子の鼻先ぎりぎりで足がピタリと止まった。

「次は当たっちゃうかもね」

それだけ言うと光はつくし達の部屋の扉をノックし、中から返事が聞こえたのを確認してから部屋に入った。その場には腰が抜けて座り込む女子の姿があったとか。

「あ、光!いい所に!あたし、あいつらにやり返してやろうと思って――」

「本当に!?何する?桜子さんが言ってたつらら?それとも道明寺さんが言ってたクマのエサ?それとも私が一人一人やってこようか?大丈夫、顔に傷は残さない!」

「大丈夫じゃないから、それ!」

光があまりにも嬉々として話すのでつくしは慌ててそれを止めた。

「昨日も少し言ったけど、ちょっとあいつらを怖いめに合わせてやろうと思って…今日夜に怪談話をするの。その時脅かしてやろうかなって」

「…昨日も思ったんだけど、つくしっていじめるセンス無いよね」

本当にその作戦で行くんだ。結構冗談だと思っていたのだけれど。

「総二郎さんも着物持ってきてないから、私幽霊出来ないよ…折角日本の幽霊にしようと思ったのにさぁ」

この黒髪の使い道無いね。そう言うと優紀は声を出して笑った。

「光ちゃんが居れば頼もしいね、ホント!」

「そんなに面白かった?」

光が首を傾げるとつくしも少し困ったように笑った。

「あ、つくし。さっきさ、あの三人組とすれ違ったの。大丈夫!手は出してないよ!」

「…あ、うん」

「足は出したけど」

「えっ…ねぇ、光って実は物凄くバカなんじゃないかと思う時があるんだけど!」

「光ちゃんって少し抜けてる所があるよね」

そんな事無いのにな、光は軽く唇を尖らせた後、その雰囲気が楽しくて小さく笑った。

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