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二人は言葉の通り和食屋で昼食を取った後、光は西門を連れてブティックに来ていた。

「お前もこういう店来るんだな、意外」

「総二郎さんが嫌がると思ってこういうお店にしたんだけど」

しっとりとクラシックが流れる店の中は静かでゆっくりと店が見れるようになっていた。光は店を見渡した後隅に飾られる花器に目が行った。

「…椿か。珍しいな」

店の花器には椿が生けてあった。縁起が悪いと思う人がいるだろうが、これもまた最先端のおしゃれかもしれないよ。光は小さく呟いた。

「椿の花言葉知ってる?」

「いや、知らねー」

「椿は“控え目な愛”“気取らない美しさ”椿さんにピッタリかもね」

その時、椿がボトリと花器の外に落ちた。もう寿命だったのだろう、椿は花弁丸ごと落ちる。

「縁起悪いな、光」

「え?私が縁起悪いの?…まぁ、椿の落ち方は忌み花だって言う人もいるけれど、私は潔くて好き」

光は落ちた椿にそっと手を伸ばした。

「こういう生け方も嫌いじゃない。こうするとまるで水路の落椿みたい」

水面に椿を置けば光は満足そうな顔をした。そこを中心に波紋が広がっていく。そしてもう興味が無いと言うように店の中を見回した。

「あのコート可愛い、ね、総二郎さんはどう思う?」

「ん?あのコートの形は無いな。俺が女に着てもらうなら断然こっちだな」

「寒いから。それじゃあ防寒出来無いから」

ったく。コートを見に来たのに普通のジャケットなんて。せめて春先になら良いものの、これからの時期は寒くて使えない。光は西門の言葉を聞いて唇を尖らせた。目を逸らした先のウィンドウに目が行った。

「あ、ピアス可愛い…」

だけれどピアスは開けられないから残念だ。花弁の中心に控え目なルビーが飾られていて光はそれに目を奪われる。その花は決まっていないのだろう、椿のようにも梅のようにも見える。

「…お前には花が似合うな」

西門はぽつりと呟いた。そして自らの言葉に首を傾げた。光も呆然としていた。

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bkm
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