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光は目を覚まし、自分を抱きしめて寝る西門の腕をそっと解き、ゆっくりと立ち上がった。寝巻きに使えと出された普段使いの男物の着物を裸の体に羽織った。前を手で閉めてバッグから取り出した煙草を取り出し火を点けた。

「…どうして私は嘘を見抜いてしまうんだろう」

それならもう少し騙されたままのバカでいた方が利口だと思った。好きだと言う西門の言葉の中に愛情なんて無い事は端から気付いている、だからこそ騙されたままで居た方がこの喪失感やだるさも無かっただろう。ベッドの中で西門が目を覚ますのを待っていられただろうに。

「…何だ、お前もう起きてたのか、早いな」

光は首を回してその声の主を見た。下だけ履いた上半身裸にも照れる事なんて無い。そんなに初心ではない。

「あーおはよ、煙草吸いたくて目ぇ覚めた」

「お前ってば相変わらず。昨日あんな事あったのになぁ」

「こういうのを望んでたくせに、注文多いよ、総二郎さん」

確かに。何も変わんなくて良かったわ、面倒事じゃないから本当に楽だわ、お前。その言葉に光はどうもと小さく手を挙げた。

「…そう言えば今日はクリスマスか。もう昼前だけど」

「だな。俺夕方には司ん家行くわ。牧野とどうなったのか気になるし」

「どうぞ。私今日夕方からバイト入ってるの。急に休み貰っちゃったけど、大丈夫そうだから行く事にする」

西門家に花嫁修業って言ったって案外居候みたいだと気付いた。話を聞けば西門父はあまり家にはいないらしいし、母親も西門の女関係には口出すが、光と仲良くしている事を知ってか最近言ってこないらしい。

「バイトって和菓子屋だろ?んじゃ帰り迎えに行く」

「別にいらない」

「夜出かけてバラバラに帰りゃ怪しまれんだろーが」

「…あ、総二郎さんはお母様を牽制したいのか。うん、分かった。じゃあ、よろしく」

西門は後ろから光の額に手を伸ばしたと思えば、そのまま後頭部にキスを一つ。

「何?」

「いや、お前案外可愛いな。しかも優しいときた。ポイント上がったわ」

「ポイント制だったのか。何言ってるの、総二郎さんも優しいよ、人としては」

「男としては最低だよな、お前の理論だと」

何だ、よく分かってんじゃん。光は小さく笑った。

「それにしても急に来るのは危ない。こっちは煙草持ってんだから」

「お前こそその格好は危ない。こっちは男なんだから」

「バーカ!」

何その言い回しは!光は思わずぷっと吹き出してから笑った。

「腹減ったなー。飯食いに行こーぜ。光、何食いたい?」

「あ、和食食べたい!昨日の夜が豪華だったら少し胃を休められるようなやつ」

「年寄りか!お前は」

事実なんだから仕方ないでしょうが。光は眉をひそめた。アルコールは抜け、空腹を感じるも胃もたれしそうな雰囲気があるのだから。

「時間余ったら買い物行きたい。付き合って」

「めんどくせー」

「じゃあ、見立ててよ。何も買ってもらおうとは思ってないからさ。あ、今クリスマスバーゲン中だ!」

「庶民か、お前は!」



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