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「栗巻あやのに会ってきたんだけどよ、ありゃ遊び慣れてない超ピュアだわ。婚約者にしか興味無いとみた」

西門一人で遅れて戻ってきたと思えば、席についた途端これで相変わらずだと光は小さく笑った。

「残念だったね、遊んでくれる人じゃなくて」

「だよなー。親が決めた婚約者をどーして好きになれるかねぇ」

チクリと針で刺されたような小さな傷み。それでも光は気づかないフリをする。

「その天草さんがよっぽど良い人なんじゃないかな?総二郎さんと違って」

「…お前、言うよな」

今に始まった事じゃないでしょうが、そう言うと西門も確かに、と小さく笑った。次の競技は知性を量るもの。競技内容はマナーと英会話となった。1番の栗巻あや乃はマナーも英語力も完璧だった。2番の前川園子はカップを落としその場で脱落。3番の桜子は英語力はあっても気品が無いと椿は言う。そしてつくしの番になった。つくしはなんとかYes,Noで返して行くも、審査員が突然早口で話し始めた。早く終わらせるつもりだった。イギリスのベストセラー本の話等されてもつくしには分かるはずがない。犯人の名前は…審査員はぼんやりした口調で呟いた。具合が悪いのかふらふらとしたまま倒れ込みそうになるのにつくしは手を伸ばした。

「Pale!」

その大きな声は会場に響き渡る。それとすぐにカップが割れる音。つくしはなんとか先生を支えた。

「大丈夫ですか!?」

審査員はそれに答える事なくつくしの肩を掴んだ。早口で何かを喋っているようだが、こちらまでよく聞き取れない。審査も制限時間より途中で終わってしまった。

「舞台に上がってこんなに観客が見てる前でとっさに体が出るだけ大したものよ。つくしちゃん立派よ、よく頑張ったわ。もういいじゃない、十分よ」

皆が諦めている中一人だけ絶対につくしを信じやまない男。それが奇跡を起こしたように通過者の名前につくしの名が上がった。

《牧野さんは英語力はまだまだですが、イギリスのベストセラーを読むなど向学心がうかがえました》

ベストセラー?光は首を傾げた。きっとつくしは読んでいない。倒れる時に叫んだ言葉が犯人の名だったのだろうか、奇跡はつくしに味方しているようだった。

《栗巻あや乃さん、牧野つくしさん、この二名で日本一を競っていただきます!》

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bkm
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