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「あれ、光じゃん。何してんだ。お前がテラスに居るなんで珍しいな」

「人ごみの中で物事考えたい時もあるの」

一人で居ると余計な事まで考えてしまいそうだった。そうしたらまだ人の目の中に居てそっちを気にして居たい。光は西門が現れるまでそんな視線やどうしてティーン・オブ・ジャパンに出ないのかそればかり聞かれていた。聞かれなくてもそんな視線は集まっている。

「そういや、牧野な決心したらしいぞ。で、これから司ん家で特訓だと」

「…そう」

光は言葉から分かる通り落ち込んでいるようだった。つくし頑張っているんだ、そんな言葉もない。いつもの覇気もない。

「何、何かあったのか?」

「まぁね」

「…それよりも何でお前は辞退したんだ?」

それよりもってどう言う事だ。肘をつきながら光は見上げるように西門を睨んだ。私の悩みはどうでも良いってか。

「…おばあ様がそういうのが好みじゃないからよ。女子たるもの表立つ事はなく、常に男性の半歩後ろを歩く事。社会に出る必要なんて無い。家を守るもの、黙って夫の帰りを待つ、勉学は全て夫のサポートの為、そう思ってるから」

うわー…時代錯誤も良い所だ、西門は呆れるばかりだった。

「…ねぇ、総二郎さん。私とつくしって友達に見えない?」

「見えない」

ざっくりと切った西門の言葉に光は目を見開いて驚いた。そうか、見えないのか。何でか分からないけれど、見えないのか…。光はガクッと手から顎を滑らせそのまま体勢を起こそうとはしない。

「お前は黙ってりゃいいとこのお嬢様だろ?で、あいつはド庶民。本当なら接点すら無いだろ、普通」

黙ってれば、口を開かなければ、と最近やけに聞くじゃないか。どれだけ口が悪いんだ、私は。まぁ知っているけれども。こっちの方が楽で素なんだから仕方ないだろう。光は眉間に皺を寄せる。

「…でも結局の所、ダチなんだったら何でも良いだろーが。お前がダチだって思ってんだったらそれで良いじゃん。何に悩んでるわけ?それともお前は牧野から言葉が欲しいのか?行動示して欲しいのか?」

ぐさっと突き刺さる言葉は図星だからだ。私が不安に思う、それが信頼を壊しているのかもしれない。何で気付かなかったのか、それはきっとしばらく友達が居なかったからだ。何で私に何も言ってくれなかったんだろうか。相談の一つくらいしても良いのに。そういうのが友達だと私は思う。そうしたら私は親に頼んで――…

「…つくしが何も言わないのは、私に迷惑かけたくないから、そう思っても良いのかなぁ?」

「あいつの考える事なんて俺は知らねーよ」

「…総二郎さんって本当に惜しいよね」

ここで同意してくれたら株も上がっただろうに。嘘はつけないタイプに見えない。いや、私に嘘をつく必要が無いだけか。

「はぁ!?こんなパーフェクトな男目の前に惜しいって言う奴お前だけだぞ!」

だけれど、このポジションが一番丁度良いのかもしれない。私も大体は本音で言葉を隠さずに話させている。光は微笑んだ。

「ありがとう、総二郎さん、元気出た」

「はぁ?」

「私もつくしの事応援したいな!ねぇ、道明寺さんの家、私も行っていいかな?」

「おう。牧野励ましてやれば?相当スパルタらしいぞ」



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