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「となりいいですかー?」

小さなベンチには子供が二人座れるくらいのスペース。その後ろにはスーツを着た父親ではない男を二人連れている不思議な男の子だと思った。

「いっしょによむ?」

その男の子は笑わない子だった。何が好きかと聞いても指をさすだけ頷くだけ。光は逆にそれが気になっていたのだ。小さい頃から負けず嫌いの光はこの子を笑わせたい一心だった。自己紹介は勿論の事、家の話や父親の話、変な事を言ってみたり、変な顔をしてみたり。ある日彼は言った。

「…いたい…?」

それは久々に発したようなか細い声。

「いたいけど、平気だよ。光、自分が強くなってるって分かるの、あかしなの」

「…キズがあかし?」

「がんばったしょうこ、だよ」

少年は首を傾げていたけれど、違う反応を見せてもらっただけで充分嬉しかったのだ。実際はこんなに綺麗な記憶だけではない。あのアホな親父の事を思い出した。小さい頃傷が絶えなかった。それはアホな親父が訓練と称して無茶苦茶な事を娘にしていた為だ。骨折すればその病院に連れて行かれるものの、骨折すると骨が強くなるらしいぞ!父の自信満々の声。あぁ、懐かしい。顔はぼんやりとしているけれど、ちゃんと私の頭の中に父の姿があった。



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bkm
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