「ふあぁ…」
光はあくびを隠しながら廊下を歩いた。頭がすっきりしないのは酒が残っているせいか、それとも日課の朝練をしなかったせいか、寝不足か。色んな出来事が重なり過ぎてよく分からない。
「おっきなあくび」
「ん?…あ、花沢さん。おはようございます。昨日ぶりです」
類相手でも光は恭しく頭を下げるのだ。昨日はつくしとどうなったのか、確かに気になったがすぐに聞く程無粋な事はしない。
「ねぇ、えっと…あんた…名前なんだっけ」
「宮永です。宮永光」
まさか一日に二度も自己紹介するとは。しかも初対面ではない人に。二人は似ているのだろうか。それともF4の四人には共通点があるのだろうか。光は少し困ったような笑みを浮かべた。
「そう宮永だ。…あんたってさ、健康?」
「は?」
え?健康って健康、けんこう…?健康だよね。光は頭の中で考えた後頷いた。
「健康ですね。病気にならないんですよ。予防接種とかしなくてもあまりかからないので…」
「…じゃあ違うか」
「え?何ですか?」
「…前に会った事あるかもって思ってたんだけど、それ病院でじゃないかなと思ったんだよね」
「……病院…?」
私が花沢さんと病院で会っている?光は首を傾げた。最近病院に行った記憶が無い。
「病院って言っても最近じゃないよ?ガキの頃。俺、体とか精神的に弱かったんだよね。それで小児科が有名な病院で会った気がした、君と」
「あぁーっ!」
光は大声を出した。それに集まった視線。
「光!お前は令嬢のくせになんつーでかい声出してんだよっ!」
あら、あんな隅っこにF4の内の三人が座っているじゃないか。そこで西門に怒鳴られたのだ。
「ごめん、お兄ちゃん」
「誰がお兄ちゃんだ、アホ!って、類じゃん!」
「なんだよ、今頃登校かよ。こっち来いよ」
邪魔になっては行けないと光は何も言わずにその場から立ち去った。そして花沢類に言われた事を思い出す。病院…そう言えば忘れていたけれど自分は小さい頃病院に通っていたはずだ。小児科で有名な病院は子供達であふれかえっていた。待ち合い室には子供達が居過ぎて息苦しく思って、光は絵本を持って屋上を見つけたのだ。そこには先客が居た。