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「おいー光…お前こんなとこで寝んなよー…一応女だろ」

「…こんな所でレディファーストかよぉ…普段しないくせにぃ…」

二人の声は弱弱しい。先程から浴びる程酒を飲んだせいで足元すらおぼつかないのだ。光はソファーの上で膝を抱えながら何度も転寝しそうになっている。

「…雑魚寝でじゅーぶーん…間違っても襲うなよー…」

「…こんな酔っ払ってたら、無理…頭回ってぜってぇ受け身…お前…攻めれるか…」

「…だめ…攻めたら吐きそう……マグロー……」

…ったく。こいつを運んでやる気力もねぇ。こいつなら平気だ、無駄な自信を共に西門は光の手を引いた。

「膝抱えて寝たら、体痛くなっから…こっち来てろ」

眠気もピークになっていた光はそのまま西門のされるがままで、ソファーの上で二人横になった。いくら道明寺家のソファーと言えど二人横に並ぶと流石に狭い。西門は光が落ちないよう腰に両腕を回して目を閉じた。


「…ん…」

西門はゆっくり目を開いてその光景に驚いた。自分が光を抱きしめたまま眠っていたではないか。光も光で離れないと言うように西門の胸の布を両手で掴んでいる。

「…黙ってりゃ可愛いのに」

ソファーから落ちる髪をそっと撫でるように戻して、西門は光を起こさぬようソファーから退いた。空いているテラスの方を見れば先客が居て驚いた。寝ていなかったのではないか?飲みすぎて痛む頭を数回軽く叩いてから西門は司に声をかけた。司から幼稚舎の話を聞く。類には絶対勝てないと思った。敗北感、そして罪悪感。借りを返す番だと言う事を。

「光!起きろよ」

「…いって!起こすのに…頭叩くか、普通……」

光は眉間に皺を寄せながら起こした人間を睨み付けた。人を、しかも女を起こすのに頭を叩くなんて一体どんな神経をしているんだ。

「お前がいつまでも寝てっからだろ」

西門としては光を一瞬でも女として見てしまった自分が悔しかったからだ。こいつは意外に気が合いそうな友人で充分だったと言うのに。その先を一瞬でも想像してしまった自分に腹が立ったのだ。

「あんたがうるさいからでしょーが!がーがーいびきかいて、美作さんも寝言うるさいし、私が寝たの朝方なのに」

「………」

「…ふあぁ…」

光は大きなあくびを手で隠してから道明寺の顔を見た。この人はまだ気軽に喋れる存在ではなかったのだ。光は慌てて頭を下げる。

「あ、…道明寺さん、すいません、ご迷惑をおかけしまして…」

「はぁ?あー。まー気にすんな」

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