「ただいま」
突然屋上に新しく聞こえた声。その声にその場に居た皆は扉を振り返る。驚いて目を見開く。そこに居たのは好きな人を追いかけて海外へ跳んだF4の残る一人の花沢類だった。
「類!なっなんだよ、お前突然帰ってくんじゃねーよっ!」
類はすぐにF4メンバーに囲まれて取り残されたつくしと光。
「ちょっとおどろかそうと思ってさ。あれ?久々だね。どうしたの、その傷だらけの顔」
「お…おかえりなさ…」
類の言葉につくしは顔を赤くし、たじたじに答える。
「類。俺と牧野つきあってんだよ」
そう言うのは道明寺だった。つくしは突然の事に目を丸くする。
「えっ」
「へぇそりゃ残念」
随分と淡白な挨拶だと思った。そして類は光の方へ視線を合わせてから首を傾げる。
「そっちの女の子は?知り合いにこんな子居た?」
「あぁー。一応俺の婚約者」
「初めまして?…宮永光です」
西門のこの紹介にも慣れ、いつもの通り光が頭を下げようとしたが、生まれた疑問のせいで上手く下がらなかった。
「…ん〜君と初めて会った気がしないのはどうしてだろう?」
ナンパの常套句だろうか。いや、花沢類にナンパ癖があるとは聞いた事無い。むしろ、他のメンバーよりも女に冷たいと言う話を聞いた事があるくらいだ。学校ですれ違ったんじゃね?その言葉によって初対面の挨拶は終了した。そしてF4は再会に授業はふけると居なくなった。
「あたし達も行こっか」
「あ、うん」
「ねぇ、光って呼んでいい?あたしもつくしで良いし」
その言葉を聞いて光は口元を押さえた。思わず涙が出そうになったのだ。
「…ちょ、嬉しすぎて涙出そうだ…!友達出来たのって、何年ぶりだろ…!」
「光って面白いキャラだったんだ。あたし達これから仲良くなれそうな気がする!」
その言葉に光はパァッと顔を明るくさせた。友達、仲良くなれそう。それだけで光は嬉しくて仕方ない。念願だった。一年も待ってようやくの事だった。
「あ、あのね、私松岡さんとも友達になりたい!」
「すぐなれるよ」
「後買い物行きたいし、お茶もしたいし、色んな話したいと思ってた…」
したい事を語る途中で光は話を止めた。それにつくしは首を傾げる。
「…大丈夫かな…。二人に迷惑、かからないかな」
思い出すのは中学の頃。二人にいじめられると言う事ではない。他の、光の心にもっと傷として残っているもの。
「友達になったくらいで誰が迷惑すんの!そんなので友達作らないなんておかしいし、迷惑かけていいじゃん、友達なんだからさ」
つくしはそう言いながらお揃いの頬の湿布を指さした。光はそれに少し困ったような笑みを返した。嬉しいようなもどかしいようなそんな笑みだった。
終