175 [ 1 / 2 ]
そして遅れてきたつくしはドレスを持ったまま、私服姿だった。しかもあちこち泥で汚れている。

「やだ汚い」

「なにあの格好!信じられない」

つくしを追い出そうとした男の手を類は振り払う。

「戦闘服、最高」

類のエスコートでつくしは会場へと入って行く。

「え?ま、まだ来てないの?道明寺」

「ああ。まったく、なにやってんだ」

「しかしおまえのそのかっこ…」

「よすぎ」

流石のつくしとでも言っておこうか。正装しているよりもその方がつくしらしいと言えばそうだった。が、流石に光は声を出さなかった。

「あ、ダンス始まりましたよ。英徳名物小社交界!」

何だ、それ。光はプロムに参加した事がなかった為に分からなかった。

「なんかうずうずしてきた!桜子!踊ろ!」

そういうとシゲルは桜子を連れて中心へと駆けて行った。あの二人も相変わらずだ、光はそれを見て微笑む。

「お、踊って。つくしちゃん」

「は?」

「おー!やるな、和也」

「ほら、牧野行ってこい!」

つくしと和也の二人は踊り出した。それに対して周りの視線は冷たいものだったが、二人は全く気にしていない。私が何度も救おうとした二人の姿だった。

「さて、俺が一番乗りな」

美作は歩いてつくしの所まで行った。足を踏まれてもまぁ、仕方ないみたいな表情を浮かべている。

「次は俺な。待ってろよ、次踊ってやっから」

「遠慮するわ。踊った事なんかないし。ほら、早く行ってこい!」

「ありえねぇー彼氏を他の女と踊らせようとする彼女って」

「あんたの常識が私に当てはまると思うなよ」

光は笑いながら西門の背を押した。今回聞いていた事。パートナー同伴が基本のプロム。光は時間が分からないから一緒には行けない。だから会場で見つけて。誰か誘っても良いよ。その言葉に俺ら皆で牧野指名するわ。妬くなよ、そんな声。

「感謝してるんだろうね、皆も」

私と同じようにつくしに感謝しているのだろう。だったら素直にお礼を言えばいい。光はつくしと西門が踊るのを笑顔で見ていた。

prev next

bkm
BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -