そして遅れてきたつくしはドレスを持ったまま、私服姿だった。しかもあちこち泥で汚れている。
「やだ汚い」
「なにあの格好!信じられない」
つくしを追い出そうとした男の手を類は振り払う。
「戦闘服、最高」
類のエスコートでつくしは会場へと入って行く。
「え?ま、まだ来てないの?道明寺」
「ああ。まったく、なにやってんだ」
「しかしおまえのそのかっこ…」
「よすぎ」
流石のつくしとでも言っておこうか。正装しているよりもその方がつくしらしいと言えばそうだった。が、流石に光は声を出さなかった。
「あ、ダンス始まりましたよ。英徳名物小社交界!」
何だ、それ。光はプロムに参加した事がなかった為に分からなかった。
「なんかうずうずしてきた!桜子!踊ろ!」
そういうとシゲルは桜子を連れて中心へと駆けて行った。あの二人も相変わらずだ、光はそれを見て微笑む。
「お、踊って。つくしちゃん」
「は?」
「おー!やるな、和也」
「ほら、牧野行ってこい!」
つくしと和也の二人は踊り出した。それに対して周りの視線は冷たいものだったが、二人は全く気にしていない。私が何度も救おうとした二人の姿だった。
「さて、俺が一番乗りな」
美作は歩いてつくしの所まで行った。足を踏まれてもまぁ、仕方ないみたいな表情を浮かべている。
「次は俺な。待ってろよ、次踊ってやっから」
「遠慮するわ。踊った事なんかないし。ほら、早く行ってこい!」
「ありえねぇー彼氏を他の女と踊らせようとする彼女って」
「あんたの常識が私に当てはまると思うなよ」
光は笑いながら西門の背を押した。今回聞いていた事。パートナー同伴が基本のプロム。光は時間が分からないから一緒には行けない。だから会場で見つけて。誰か誘っても良いよ。その言葉に俺ら皆で牧野指名するわ。妬くなよ、そんな声。
「感謝してるんだろうね、皆も」
私と同じようにつくしに感謝しているのだろう。だったら素直にお礼を言えばいい。光はつくしと西門が踊るのを笑顔で見ていた。