光は車の中で西門に貰ったドレスを身に纏っていた。相変わらず品が良いのなんのって。足袋を脱いでパンプスに足を通す。クラッチバッグもセットでトータルコーディネートだ。男が女に服を送る時は脱がしたい服だっけ?光は小さく笑った。プロム会場へ向かって光は足を進めた。パートナー同伴なんて関係無い。私が待つ人はもう中にいる。私を待ってくれている。会場に入れば辺りがわっと盛り上がる。
「宮永さん、おめでとう!」
「ありがとうございます」
誰だか知らないけど。光はいつの間にか有名人であっという間に人に囲まれた。早く抜けて皆の所に行きたいのだけれど、それを許さない。挙句の果ては握手して下さいだ。光は溜め息を吐いた。
「はいはい、失礼するよ」
光の周囲が綺麗に割れた。そこにいるのは私が待っていた人。
「ちょっと。もうちょっと早い登場出来なかったの?」
ヒーローは遅れてくるもんなの、西門がそう言う前に声を挟まれる。
「あぁー!光ー!」
「あれ?シゲルさん!何でここにいるの?永林のプロムは?」
「つまんないからこっち来ちゃったよー!それにしても久しぶりー!」
久しぶりだね、光が笑顔で言うとシゲルはそのまま光に飛びついておめでとう!すごいね!と繰り返す。いつもこの無邪気な笑顔に励まされる。
「ありがとう」
「あぁ!もう宮永先輩ッ!どーして電話出てくれないんですかっ!」
「あ、桜子。だって最近本当に忙しくてさ、ようやくここにも来れたの。許して」
もう絶対遊んで下さいよっ!しっかりしている桜子はたまに後輩らしく可愛らしい。
「宮永。今日のドレスいいね」
「そうですか?誰かさんの贈り物なの」
サンタ?いや、この時期にサンタは来ない。類の突拍子の無い発言にもようやく慣れた。少し不思議で可愛らしい猫みたいな人。
「あ、光ちゃん。すげぇ久しぶり」
「そうですね。色々ご迷惑をかけてすいませんでした。もう大丈夫ですので」
「あのさ、総二郎が重大発表あるって言ってたんだけど、何?」
お楽しみですよ、光は小さく笑った。この人はよく私の気持ちに気付いてくれた。私を何度も助けてくれた。気を遣い過ぎてたまに苦労しているけれどとても面倒見の良い人。
「似合ってんじゃん。俺の見立てに狂いはねぇな」
「違う違う、着こなしてるの私が」
「お前なぁ」
周りがこの二人も相変わらずだと笑う。この人が私の待ち人。ずっと待っていた、追いかけていた。なんとも不思議な関係だと思う。言葉にするのは難しくて簡単に言ってしまうなら好きな人だ。
「総二郎さん、卒業おめでとう」
よく卒業出来たね、光は小さく笑った後このメンバーに足りない人物がいる事に気付く。
「あれ?つくしと道明寺さんは?」
「まだだよ。ったく、あいつら何やってんだか」
終