《西門さんッ!宮永先輩に連絡取れないんですけど、何かあったんですか!?》
「…何かあったって…あいつがすげぇ賞取ったのくらいテレビで見たろ」
《折角女5人で久しぶりに集まろうって話になったのに…学校にも来てないし、プロムには出ますよね!?》
あぁーもううるせぇ。西門はちゃんと言っておくから。そう言って桜子の電話を切り、自分の横に居る人物を見た。
「…寝かせて、30分だけ」
突然現れた顔色の悪い人間は部屋に入ってベッドに倒れた瞬間に眠ってしまったのだ。最近忙しさのあまりまともに寝れていないのだろう。既に深い眠りだった。死んでしまったような静かぶりに寝息を確認したくなる。西門は光の口元に耳を近づけた。
「…よし、生きてる」
無駄な確認。そのまま西門は光の額にキスを一つ落とした。
「ん…」
「悪い。起こした?」
「……だいじょぶ、だいじょぶ……もう起きる」
光はゆっくりと起き上がった。
「まだ20分くらいだぞ」
「…また寝たら今度こそ起きれないし…少し喋ってて…」
光の頭を西門はぐしゃりと撫でた。
「司の話は知ってんだろ?あいつ卒業したらニューヨークだって」
「…うん、ニュースで見た」
「卒業式の日に発つってよ」
「…そっか、会えると良いんだけど…」
牧野がどうするかは聞いていないけれど。
「…後、類が免許取った。で、俺は死ぬかと思った」
「…あはは、類さんって運転下手そうだよね」
意外に大雑把な所があるから、光は小さく笑った。
「…総二郎さんも卒業するんだね」
まさかこんな気持ちで三年の卒業式を迎えるとは思っていなかったよ。と、言っても同じ敷地内だ。大した違いもねぇよ。西門は笑みを浮かべる。
「なぁ、光」
「ん?」
「…俺さ、お前と本気で付き合ってんのあいつらに言うわ」
「え、付き合ってたの、私達」
それを聞いて西門は引き攣った笑みを浮かべた。こいつはいつもそうだ。いや、こんな所でキレてもいい事がない。それを心得ている西門は光の頭をコツンと手の甲で叩いた。
「それは俺の決意だ。じゃねぇとまた女遊びしそうだし」
格好悪い事も出来てしまう自分が怖い。何もそれは格好悪くはなかった。自分がそう決め付けていただけで。
「…ふーん」
それでも良いような、いや良くはないか。光はぼんやりとする頭の中で考える。
「お前は俺が女遊びしてても良いわけ?」
「…よくないって言ったらやめてくれんの?」
「お前次第」
西門は光の唇に自身のそれを合わせた。
終