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《司の親父が倒れた。わりぃけど発表は一緒に聞けねぇや》

「いや。そもそもそんな約束してないし、道明寺さんの所行ってあげな」

お前なぁ。電話越しに西門の溜め息が聞こえた。F4が卒業の前にまた学園が騒然としそうだ。今大変なのは道明寺さん。自分は結果を受け入れるだけだ。光は頬の湿布を勢いよく剥がして着物に身を通した。

《投票の結果、今回の最優秀賞は宮永光さんに決定致しました》

辺りから拍手が起こった。光はそれを呆然としたまま何の事かと戸惑う。

《宮永光さん。壇上へ》

手を引かれて、光は壇上へ上がった。その横には自分の作品。私の心が置いてあった。

《史上最年少受賞と言う事で――》

マイクの音が遠い。フラッシュが眩しい。光はマイクを向けられてなんとか答えるもすぐに自分の言った事は忘れる。

「…今回若輩者の私がこの様な名誉な賞を頂けたのは私一人の力ではございません。大事な方々の支えがあっての事だと思っています。これに驕らず――」

自分が言った事で覚えているのはそれだけだった。いつの間には隣には祖母と父親の姿があった。雑誌の取材も呆然と受けるだけ。

「これから皆で食事にでも――」

「光っ!」

車に乗り込む時に聞こえた声に光は振り返った。祖母達に先に行ってもらい光は自分の名を呼んだ人物に微笑む。

「ニュースで見たぞ!お前最優秀賞だってな、すげ――」

光は西門の胸に頭を預けた。心臓の音が早い。走ってきたようだった。何でわざわざ走ってきたの?走る程の事なの?いつもなら恰好付けて気取って待ってるんじゃないの?何であなたがそんなに嬉しそうなの?

「…光?」

西門が光の肩を掴んで顔を上げると光の頬には涙が伝う。

「……あ…うん…」

恰好付けてるのは私の方だった。騙されたくないからって傷つきたくないからって。そりゃ恥なんかかきたくないよ。それでもその笑顔には騙されても良いと思ってしまった。

「そりゃ嬉しくて言葉も出ねぇよな。なんたって最年少受賞だもんな。すげぇよ、お前の努力、ようやく世間に認められんだぜ」

違うよ、認めてくれるのは総二郎さん一人だけでも良かったんだよ、もう。私が泣くのはそれじゃない。あなたの本気が垣間見えたからだよ。西門は光の涙を指で拭った。

「…私…っ、頑張ってきて良かったっ…」

何度も諦めようとした気持ち。早くなくなってしまえば良いと思っていた恋心。拒否しながらもずっと持っていて良かった。

「おう」

「…私っ…すごい、嬉しいっ…」

あなたが私ただ一人のために汗を流して走ってきてくれた事が。

「……総二郎さんを好きでいて良かったっ…消してしまわないで良かったっ」

あの時の自分に教えてあげたい。何度も泣いた夜はいつか必ず眩しい朝になる事を教えてあげたい。

「あなたが好きっ…」

「…光?」

「…好き、すき……好きだ、この」

「このはいらねぇーよ!安心しろ、俺もお前が好きだから」

西門は光を抱え上げた。光の為なら必死になれる自分を見つけたから。



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bkm
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