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西門は更との約束であったあのビルへ更と二人で登った。が、そこから見えるはずのビルは取り壊されていた。そして二人の一期一会が終わったのだ。西門は優紀をそこへ呼び出してその事を告げる。

「優紀ちゃんを恋愛対象に見る事は出来ない。でも俺にとっては革命を起こしてくれた人だよ。大事な存在」

優紀はそれを聞いて道明寺の言葉を思い出していた。――今の自分をブチ壊せ。一回きりの人生だろ?そして優紀自身も革命を起こした。

「…西門さん。今度は一期一会、逃さないで下さい」

「ん?」

「後は教えてあげない」

優紀はからかうように西門を見た。西門は首を傾げる。天気の良い帰り道の途中、西門の携帯が鳴った。それは宮永家からの着信だった。

「出ないんですか?」

「…いや、珍しいと思って」

番号は登録しておいたものの、実際かかってきた事はなかった。西門は首を傾けてからその電話を取った。

《光を知らない!?》

いきなりの大声は光の母のものだった。

「…光、いないんですか…?」

《何の連絡も無しにいなくなった事は無いの…!どこにいるのか総二郎さんなら分かると思ったのだけど…》

「携帯は?」

《それが繋がらなくて》

分からないのなら良いわ。こっちも心当たり探してみます。西門は電話を切った。

「光ちゃん、どうかしたんですか…?」

「…あいつ昨日家に帰ってねぇらしい。無断外泊は初めてだと」

あいつが誰かと出かける可能性。シゲルか桜子。牧野…は司と一緒にいるらしいから電話してみよう。それにあきらに類。

《え、光がいないの!?私達も捜すよ!》

「大事にはすんなよ。まだ何もわかんねぇから」

返ってくるのは大抵この言葉。誰に聞いても昨夜光と会った人間はいなかったのだ。

《…総二郎。…俺、光ちゃんに余計な事言ったかもしれねぇ》

「…は?」

美作の言葉はまるで違っていた。

《…俺からははっきり言えねぇけど、光ちゃんずっと悩んでた》

はっきり言えない?知ってるけれど言えない悩み。そんなの俺に関する事じゃねぇの?思いあがりか?

「…ったく!あいつどこ行ったんだよ…!」

「…西門さんは分かるかもしれない」

「え?」

「光ちゃんが行きそうな場所!分からないなら一つ一つ探して!今の西門さんになら絶対出来るよ!」

何でか分からない。優紀の言葉は西門に届いた。自分の中の革命を起こした人物だからだろうか。彼女に小さく謝り西門は走り出す。今度は一期一会を逃さない為に。



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