「西門さんが本気で好きで本気で忘れようとしてる人にひきあわせちゃった…」
光は目を閉じる。そうして考えを纏めるのだ。西門からお礼をしたいと言われた優紀は学校にお茶を教えに来て下さいと言った。約束通り西門は優紀の通う学校まで来た。そしてそこで西門は幼馴染と再会してしまったのだ。優紀は何も知らなかったらしいが、自分を責めていた。
「それは優紀ちゃんが悩む事かな?総二郎さんがぐじぐじしてるだけでしょ?それを優紀ちゃんはどう思う?」
「あ…あたしならその背中を押してあげたい…」
「なら押してあげようよ。優紀ちゃんが総二郎さんを変えたのは事実なんだから、聞いてくれると私は思うよ」
そういう関係に憧れていた。変えて、変えられて、お互いが大事な存在へ。優紀ちゃん、まだ総二郎さんが好きなんだね。
「…でもね、あたしは西門さんがまだ何か隠している気がするの」
優紀は顔を上げると光の目をじっと見た。光はきょとんと首を傾げた。
「総二郎さんの隠し事なんて今に始まった事じゃないよ?それを言うか言わないかは総二郎さん次第」
「光ちゃんはそれでもいいの…?」
どういう意味だ。優紀は光に探り探り聞いているようだ。光もそれに気付き、眉間に皺を寄せる。
「…どういう意味かな、それは」
「え、あ、その…あたしから見ると西門さんと光ちゃんは婚約者の関係には見えないって言うか…もっと深い何かがあると思う…」
もしかして私と総二郎さんの関係を疑っている?光はそう解釈してしまった。
「大丈夫よ、婚約は破棄にする」
「え、何で!?」
「ん〜…本気の恋をしたくなった」
だってこのままじゃフェアじゃないでしょう?対等に戦えなくてもせめて同じ土俵に立ちたいじゃない。
「そもそも婚約は親達が決めた事。何の努力も責任も無く手に入れた幸せはいつか絶対ボロが出る」
こういうのは努力したものが勝つのだ。例えそうじゃなくても私はそういう勝負の方が好き。
「優紀ちゃん、頑張って。今のあなた最高に可愛い顔してるんだから」
あなたに負けたなら私も認められる。だから約束。これからも輝き続ける事。一方通行の約束。
終
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