「…正直辛いですよ?でもね、私はもうあの二人を応援するって事に決めたんです。そういう恋の方法もありかなって思って。それに私、総二郎さんにふられました。本気にすらしてもらえなかったんですよ」
それをどうして笑顔で言うかな、この子は…美作は眉間に皺を寄せた。
「…それはさ、光ちゃんが逃げ道残す様な告白したからだろ?」
「それは分かってます。私は卑怯です。…でもね、本当の運命なら気付いてくれるかなって淡い期待を抱いていたんです」
私はバカだと誰か笑ってくれればいい。それでいい。私はそういう恋しか出来ない。
「…後ね、私そろそろ総二郎さんに婚約破棄を伝えようと思って」
「何で…?」
「…今度日展に出るんです、私。それって華人にはすごい名誉な事で。私の年齢で早々出れるもんじゃないんですよ。それに出れただけでもこの先やっていけます。例え宮永家を追い出されても、海外で講師とか出来るかなって」
婚約と言う形であの人を縛り付けるのはもう嫌だ。それほど好きになってしまったのだ。
「それに総二郎さんね、優紀ちゃんが好きなんじゃないかなぁ。だったら尚更これを機に婚約破棄すべきです、言い訳になります」
「…光ちゃんってさ、言い訳とか逃げ道残したやり方、好きだよね」
それは嫌味だと言う事が分かった。これからの私はそれじゃいけない事も分かってる。それでも私はあの花の様になりたい。椿の様に潔く散りたい。
「はい。性分みたいです。でも、」
光は持っていたグラスワインを一気に流し込んだ。それを唖然としながら見ていた美作。
「…これからは潔くなりますよ。これが私の性分なら私はそれを貫き通す。我慢は苦手なんです」
そう言うと光はニッと微笑んだ。
「…あのさ、光ちゃん、マジで俺にしない?」
「…マジで?」
「大マジ」
「…私はあきらさんの事好きです。でもそれ以上に好きな人がいるし、同情は御免です。それにその優しさは私を弱くしてしまう。私は突き放された方が強くなるタイプみたいで」
あぁ、そっか。ただ優しくするだけじゃ靡かない。牧野も光ちゃんも。美作は困った様に笑った。
終
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