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「お!やっと見つけた!」

光は前にようやく二人を見つけて足を速めた。

「あ、光!どこ行ってたの!桜子止まってくれないんだってー!」

その言葉を聞いて桜子はピタリと立ち止まった。

「それにしてもビックリした。桜子別人なんだもん。ああいうのをヤキ入れるっていうのかな」

シゲルのそういう所は無神経。

「いや、別人じゃないよ。桜子ね、初対面で私に地味でブスって言ってきたから」

光が小さく笑うと桜子は困ったように口角がひきつる。

「わかってるんですよ、自分でも私がやるべきことじゃないって。単なるいじめみたいですよね。でも――でも悪役にも悪役としてやることがあるんですよ。言っても言わなくてもあのタイプにはわかんないかもしれないですけど」

そこに隠された桜子の思いにようやくシゲルは気がついた。そしてシゲルは桜子を抱きしめる。

「好き、かっこいいよ、桜子!」

「あ、シゲルさんずるい。私も」

そう言って光もシゲルと桜子に抱きついた。

「…桜子。最高に格好良かった。これは惚れる」

「…私牧野先輩に救ってもらったんですよ。返しても返しきれないものをもらったの。あの人にどうにもならないことがあったら私がなんとかしたいんです」

それは私もだよ。光も腕に力を込めた。私だってつくしに感謝している。私の本当の気持ち思い出させてくれた。行動力をくれた。こんな素敵な出会いだってつくしが欠けてちゃ絶対に出来ない。

「じゃあ、桜子がどうにもならない事があったら、私が助けてあげる。百人斬りでも千人斬りでもしてあげる」

「…え」

「私だってやるよ!けっこー強いよ、私!」

「いやシゲルさんは宮永先輩の強さ分かってないんですよ、この人本当に強いんですよ?ゴリラ並」

「どういう意味だっ!」



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