「海、なんで黙ってんのよっ」
「いいの。可哀相なひとなんだよ、たぶん。彼のこと好きだったんじゃないかな…――だから言わせてあげたい」
それを聞いて光は立ち止まり振り返った。耳が良いのも良い事は無いな。そしてそのまま歩き出す。
「何で戻ってきてんの!?まだ何か言いた――」
「外野は黙ってろ。私は今この子と喋りに来てんの。見て分かるだろうが。部外者」
光はきつく睨み返した。
「ごめんね、えっと中島海さん。少し話させてくれる?」
友人達が遠くから見ていた。光はため息を吐く。群れなきゃ何も言えない奴らめ。
「さっきは桜子がごめんね。ブスは流石に言いすぎじゃないかなと思って」
それ以外は謝るつもりはないけれど。
「話って?」
光はすぅと息を大きく吸い込んだ。
「さっきの桜子への発言は撤回しろ」
そう言う光の目は冷たい。この子に桜子の気持ちが分かってたまるか。道明寺がずっと好きだった事も。どんな思いでつくしを応援しているのかも、だからこそ悪役を買って出た事。それくらい私にも背負わせてくれれば良いのに。
「可哀相?笑わせんなよ。桜子がどんな思いでここに来たのか考えろよ。これ以上関わるな、桜子も道明寺さんもあんたみたいな子が関わって良い人間じゃねぇんだよ」
それだけ言うと光は満足して桜子達を追いかけた。それに呆然としているのは海。
「…なんなの、あの人…」
そんな声は当然光には届いてこない。
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bkm