道明寺の容態は順調に回復していた。松葉杖こそついているが、3日で屋上まで来れるようになっていた。それを聞いて光はとりあえず安心か、と小さく息を吐いた。
《聞いてくれよ!今日類が司に手をあげたんだよ!》
「類さんが…?何でまた?」
《…いや、俺らも悪かったんだけどよ、海ちゃんと普通に話してたんだ。そしたら類が牧野の気持ち考えた事あんのかって。そんで女のしつけ悪過ぎって言った司を殴ろうとしたけど、間に牧野が入ってよ》
「つくしが殴られたの!?」
光は大声を出した。電話の向こうで声でけぇ!と怒鳴る西門は無視した。
《まぁな。牧野は平気だって言ってたけどよ……んで、俺らも本格的に海ちゃんに言う事にした》
そう…。それがきっかけで道明寺が記憶を戻す事はなかった。でもすぐに頭を切り替える。
「それは良い事だよ。助けてあげて、つくしを」
《…お前は何もしねぇの?》
「いや、言ったよ。で、海ちゃんにちゃんと言いなって。出来ないなら代わりに私が言ってあげようかって言ったら、光の場合先に手や足が出そうだって笑われた」
《確かにその通りだなっ!》
電話の向こうで笑い声が聞こえる。そこまで笑う事か?私のイメージ悪くないか?光は眉間に皺を寄せた。そして話を切り出す。
「…総二郎さん、ちゃんと考えてくれた?」
《は?》
こいつ忘れてやがる!光は携帯を握る手に力を込めると携帯がみしりと泣いた。
「私、あなたに告白したのに」
《………あぁー。言ったな。悪い》
「その悪いは何?覚えていなくて?それとも付き合えなくて?」
沈黙が長い。
《つーか、お前ぜってぇ本気じゃねぇだろ?態度変わんねぇし》
あぁ、そう来るのね。光は目を閉じた。いつもそうだ。そうやって大事な事は本気じゃないからと誤魔化す。
《俺らってそういう関係じゃないっつーか、バカやってる方が性に合ってるっつーか、女として意識してねぇって言うか》
ツゥと光の頬を伝う涙。そんなの全部あなた目線から言ってる事じゃない。私がいつそんな事を言ったよ?何かバカみたい。光は声を出して笑った。
「何本気になってるの?ありえないでしょーが!」
《てめっ!やっぱり嘘だったのかよ!》
本当だよ。
「ねぇ、少しは悩んでくれた?」
《もち。すっげぇ悩んだっての》
なら良かった。少しでもあなたの頭の中を独占出来たならそれで良しとしよう。さよなら、私の三番目の恋。
終