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「なにその女、司に近付いてるわけ」

「「なにそれ」」

シゲルと桜子は声を揃えて声をあげた。今は中島海についての話題がちょうど出たのだ。

「まて別に近づいてるわけじゃねーよ」

「そそ。たまたま入院してるとこが同じってこと。悪い子じゃねーよな」

「あたしのことは悪い子って言いたいのね…」

それは桜子の被害妄想だよ、光は小さく呟いた。

「いくら悪い子じゃなくたって牧野先輩がいるじゃんっ」

「そーだよ、いくらつくしを忘れてるからって」

「「絶対反対!」」

そして二人はまた声を揃えた。

「光は会ったのか、海ちゃんに」

「あぁー…会った」

「女から見てどーよ?」

光はその言葉に眉根を寄せた。

「…私はあまり好きじゃない」

「珍しいな、お前が人を嫌いなんてよ」

私は聖人か何かか。私だって人を嫌いになる。英徳に通う人達も好きじゃないし、桜子の事だって最初は嫌いだった。今となっては好きだ。それは桜子の事をよく知れたからかもしれない。

「…そりゃさ、私だってちゃんと話したわけじゃないからなんとも言えないけど…。私、奇抜な人は好きだよ」

奇抜…?光の言葉に皆首を傾げた。勿論普通に真っ直ぐで格好良い椿さんとか静さんも好き。

「例えば、学校の生徒中にいじめられても立ち向かえる人とか、無神経だけど真っ直ぐだとか、性格悪いと思えばちゃんと周りが見える子とか、突拍子も無い発言する人とか、たらしだけど優しいとか、たらしだけど気を遣えるとか」

心当たりのある人間はあぁ、と気まずそうに目を逸らした。

「でもさ、あの子は私とつくしの間に平気で割り込んできた。友人が顔を出したら普通席を外すでしょう?けど、その子は遠慮する事も無くその場に居座って、挙句の果てに私が持ってきた花を自分が生けるから、とでしゃばってきた。華道の家元やってる家に住んでるこの私に向かってだよ!?」

挑戦状かしら…。いや、最後のは絶対違う。誰もが思った。

「良い所は私が見てない部分かもね。でも第一印象は最悪。良く言えば天然。悪く言えば空気読めない」

「やっぱり会いに行こーよ」

「そうですね…様子見に行きましょう」

まぁ、突っ走り過ぎないようにね、光はそれを言って立ち上がった。

「じゃあ、私はそろそろ」

「えぇーもうですかー?宮永先輩最近付き合い悪過ぎですっ!」

「ごめんね、桜子。今ちょっと忙しいから許してっ!」

光は手を合わせてからご丁寧に千円札を置いてから店を出て行った。西門はやっぱり視線が合わない、と光の背中を見送っていた。いつもここで振り返るんだ。そして頭を下げてから出て行く。が、光が振り返る事はない。



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bkm
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