そして今日は面会の許可が下りたのだ。皆は道明寺の病室へと向かう。そこには怪我をして起き上がれないが普段通りの道明寺が居た。後遺症も無いと言うし、後は主役のつくしが登場すればまた幸せな日々。だが、道明寺はとんでもない言葉を口にした。
「誰?」
「誰って何が」
今病室に入ってきたのはつくしと類の二人。
「だからそこの女。今入ってきたやつ。類の女か?」
女なんてこの病室には椿と光、そしてつくしの三人しかいない。
「司。俺は誰?」
「ああ?アホかおまえ」
何かがおかしい。道明寺に西門は確認する。
「ねーちゃんに、あきら。類。で、俺の婚約者の――」
「宮永だろ」
「これは全員わかるよな?」
「てめ、ふざけたこと抜かすとはったおすぞ」
「じゃあそこで問題ッ!こいつは誰だ!?」
西門はつくしの肩を掴んだ。そして道明寺は一言、知らねえと言い切ったのだ。
「…ちょっといい加減にふざけるのやめてよ。心配してみればなにそれ?いっとくけど全っ然おもしろくないんだからっ」
「あきら警備員呼べ。この頭のおかしい女放り出せ」
おかしい。これは冗談でも照れ隠しでも無い。
「…司。本当につくしちゃんがわからないの?」
知らねぇよ。皆この状況が理解出来ないまま主治医の話を聞きに行った。そして聞かされるのは部分的な記憶喪失。つくしの事を強く考えすぎてその部分だけ欠落してしまったのではないか…そういう曖昧なものだった。
「あの…そのうち戻りますよね?記憶」
「わかりません。一生戻らないという例も報告されています」
呆然とするつくし。それに着いていると類だけは残った。帰る4人は溜め息を吐いた。
「まあ今思い出せなくてもすぐ戻るさ」
「…まあね」
「あんなに野生の強いバカが肝心な事思い出せないバカじゃないわよ」
「…ねーちゃんバカ言いすぎて意味不明」
「…大丈夫だよね、大丈夫だよね…」
「心配すんな」
西門は光の頭をぐしゃりと撫でた。光はまだ呆然としていた。つくしの、二人の為ならば何でもしたいと思っていたけれど、こればかりはどうしようもない。金を出せば治るというものでもない。光は額を押さえた。
「……奇跡は消えない…」
だって、じゃないと私も信じられない。
終
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